障害兄弟の日常

□翔の苦労と世話と遊び
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一話 翔と弟達とお兄ちゃん
夏休み。それは、課題が多く、面倒くさい。小さな子供達は宿題なんてそっちのけにして遊びほうける。
かと言って、じゃあ、自分はやっているのか?と、聞かれると、ちょっと返答に困る。
だって、宿題を初日に終わらせてしまったのだから。
自分の夏休みの1日はこうだ。
朝から昼は家の事や、弟達の世話をしている。
夜は弟達を寝かしつけてから無理矢理お兄ちゃん、いや、お兄ちゃんって言うのはおかしいかな。
兄ちゃん。いや、兄貴かな。
うん、兄貴の部屋に入って、机を勝手に借りて勉強する。
しかも、その日は調子に乗って次の日の8時30までやっていたので、くたくたでその日は兄貴に全部丸投げしてしまった。
まぁ、勉強のやり過ぎという点では、いつもより長いお説教くらったけど。
おかげて寝られたのが昼前の10時29分37秒。
次の日の事だ。
家の掃除をしていると、三男の湯対馬が抱きついてきた。
翔「どうした。眠いか?」
湯対馬は夏などはよく日向ぼっこだと言って陽の光を身体で感じている。
だから、眠くなると兄貴か俺に抱きついてくる。
湯対馬「お水。」
翔「お水?ちょっと待ってね。」
掃除機をその場に置いてコップを取り、スーパーで買った水を入れて渡す。
しかし、湯対馬は不満そうな顔をして、飲み干す。
翔「まだいる?」
湯対馬「違う。」
何をして欲しいのか、正直まだよくわからないのが本音。
一度癇癪を起こすと兄貴以外の人には手がつけられない。
なので、この場合は、癇癪を起こす前に兄貴に要望を聞いてもらうのが最善策だろう。
翔「何かして欲しい事があるならお兄ちゃんに聞いてみたら?湯対馬。」
湯対馬「わかったぁ。」
そういうと、コップを持ったままとことこ兄貴の部屋まで行ってしまった。
次の日、兄貴が庭で中くらいのビニールプールを膨らませているのが見えた。
翔「にい、兄貴なにやってんの。」
蘭夜「んー?翔?いやー実はねぇ。昨日ねぇ、湯対馬にプールしたいって甘えられちゃってねぇ。
もうお兄ちゃんその時の湯対馬の可愛さにもーメロメロでさぁ。」
あぁ。また弟ののろけ話か。
顔ももはや長男としての威厳は何処へやら。完全にでれでれ。
俺だって、兄貴を落とそうと思えば、その気になればそれくらい・・・。
翔「お、お兄ちゃん。」
蘭夜「んー?」
僕はお兄ちゃんの側に近づくと洋服の袖を掴む。
すると、兄貴が僕の方を見る。
翔「あ、あのね。僕のお願いも、聞いて欲しいなぁー。なんて・・・。」
はずかしそう言ったら兄貴ったら鼻血を出して倒れるもんだから、びっくりしたんだ。
結局、兄貴を部屋に寝かせて後始末をして、兄貴の洋服も着替えさせて、ビニールプールを膨らませるのは俺。
まぁ、元は自分のせいなんだけど。
膨らませると、携帯がなって、見てみると煉斗のコールだ。
すぐに部屋に入る。
翔「煉斗、どうした?」
煉斗は眠い目をこすると、両手を広げて抱っこを要求する。
まぁ、ね。今日は兄貴ノックダウンしてるし。(俺のせいだけど。)
家の事くらい、いつもやってるし、簡単だろ。
煉斗を兄貴の隣に寝かせる。
すると、兄貴が飛び起きる。
蘭夜「あ!しまった。」
翔「何?おに。じゃなくて兄ちゃん。」
蘭夜「ビニールプール膨らませられてない。」
なんだ。そんな事か。
翔「それなら、僕がやっておいたよ。」
蘭夜「本当!?助かるよ。翔。」
別に兄貴の為じゃないし。
翔「煉斗起きたばっかりだから、相手してあげて。」
煉斗は兄貴に抱っこされて遊んでいる様子を確認すると、湯対馬のはしゃぎ声が聞こえた。
庭に置きっぱなしにしていたビニールプールにどうやら自分で水を入れたらしい。
庭とはよく言っているが、ただ洋服などを干す所を庭と呼んでいるだけだ。
湯対馬の側に言って話しかける。
翔「楽しい?湯対馬。」
湯対馬「うん、あのねぇ、冷たいから気持ちいいのー。」
翔「そっかぁ、それはいいんだけどねぇ、湯対馬。お洋服びちょびちょだよ?お兄ちゃんに怒られる前にお着替えしようか。」
湯対馬「わかったぁ。」
湯対馬の部屋に入って、洋服を脱がせて海パンを履かせる。
翔「はい、これでいいよ。」
湯対馬は走ってまた庭のビニールプールで遊び始めた。
濡れた洋服を他の洗い物と一緒に洗濯機に入れて洗濯する。
蘭夜「翔ー、煉斗の海パン持ってきてー。」
翔「はーい。」
俺は召使いかっ。
まぁ、そんな事言っててもつまらないから持っていくと、案の定、煉斗が甘えて兄貴がデレていた。
まぁ、今に始まった事ではないので、別に問題ではない。
やる事が一通り終わって、休憩していたらだ。
遊びあきたのか、湯対馬が海パンを脱いでシャツとパンツだけでくっついてきた。
翔「ん?どうしたの。湯対馬。」
湯対馬「ぎゅーして。」
目をこすっていたので、多分眠いのだろうと思い、抱きしめて、優しく背中を叩く。
10分ほどすると、眠ったが、いつの間にか一人煉斗が増えていた。
翔「煉斗?いつ来たの?」
煉斗「さっきー。」
そう笑顔で言われると返せない。
そうだね。さっき来たんだよね。
蘭夜「翔ー、お兄ちゃんも寝かせてー。」
笑顔で飛び込んでくる兄貴に蹴りを腹におみまいする。
翔「兄貴は一人で寝られるだろ!」
そう言うと、煉斗の背中を優しく叩く。
煉斗が寝ると、自然と足が自分の部屋に。
部屋に入ると、兄貴が何かをしていた。
翔「兄貴・・・なにやってんの。」
蘭夜「えっ、翔が寝かせてくれないからせめて翔の布団で寝ようかと。」
翔「兄貴、俺もう子供じゃないんだよ。いい加減にしてよ。」
すると兄貴はしょげて自分の部屋に帰って行った。
はぁ。と、ため息はついたものの、二人は自分たちの部屋に連れて行ったので、二人きりになっておねだりすることもできなくはない。
だが、昔から蘭夜の背中、そして、家庭の事情で、翔は自分の本心をいつしか隠すようになった。
眠気がさらに襲ってきてすぐにベッドに横になると、すぐ眠ってしまった。
次回 本当の自分
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