障害兄弟の日常

□翔の苦労と世話と遊び
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二話 本当の自分

朝起きて、いつもの様に弟達を起こしてご飯を食べる。
下の二人は今日から1週間兄貴の上司の人の所に遊びに行くらしい。
狙いはわからないけれど、嫌な予感がするのは確か。
兄貴が話をしている間は暇つぶしに家の中を掃除したりしている。
だが。
こうも静かだと落ち着かない。
掃除機を元の場所に戻して自分の部屋に戻ってベッドにそのままダイブする。
俺も行けばよかったかな。
でも、それだと兄貴が一人になってかわいそうだし。
かと言って二人だけで連れて行くのは気が引けるし。
その時、携帯にメールが届いた。
実は、兄貴の上司の人。実は友達のお父さんだったりする。
メールを見ると二人の扱いがわかった。
二人の寝室はキングサイズの布団で執事が4人。
それでいて介護士が2人。
自宅用と外出用の人らしい。
執事は一人につき二人と決まっているらしい。
確かに思い返してみればあいつにも二人執事いたなぁ。
しかも、窓ガラスは防弾ガラスで、超安全でしかも床まで痛くないように作られているらしい。
メールを見ていると、電話がかかってきた。
翔「もしもし。和際か。」
和際「そーだぜっ(キリッ)」
翔「悪いね。弟達の面倒押し付けたみたいな感じになっちゃって。」
和際「いや、いいよ。俺兄弟いないからさ。俺も楽しいよ。」
湯対馬「お兄ちゃんお水ー!」
和際「はーい。ちょっと待ってねー。」
翔「元気だな。二人は。」
和際「あぁ。とりあえず切るぞ。」
翔「あぁ。またな。」
プツッ
その日の夜。
夕飯をどうするかを聞きに兄貴の部屋に。
翔「兄貴。」
蘭夜「ん?どうしたの?はっ。まさか。どこか怪我したの?お兄ちゃんに見せてごらん、治してあげるから。」
翔「そんなんじゃないし、どこも怪我なんてしてないから大丈夫だよ。今日の夕飯どうする?」
蘭夜「夕飯唐揚げにしようかなぁって。」
翔「あっ・・・そ。」
蘭夜「違うのが食べたかった?」
翔「そんなんじゃないけど・・・?」
すると、兄貴は俺の手を引っ張って抱きしめた。
翔「ちょっ、兄貴やめっ。」
蘭夜「どうしたの。翔?一昨日くらいからお兄ちゃんの呼び方もおかしいし、様子もおかしい。何かあった?」
兄貴は心配そうな顔で見ている。
心配そうな顔をしている時はとことん追及される。
自分が納得できるまで。
自分がわかるまで。
何でもないと言ったって問い詰められるのがオチだ。
翔「心配なんだ。二人が。」
蘭夜「そっか。こっちにおいで。」
俺は兄貴に逆らえない。だって。
勝てないんだ。どんなにがんばっても、どんなにあがいても、兄貴みたいになれないんだ。
ベッドの上に座ると、また、抱きしめられる。
蘭夜「本当は、違うんじゃない?」
翔「うん・・・。」
蘭夜「翔には、昔から嫌な思いとか、辛い思いとかさせてきちゃったからな。素直になれないのはわかるよ。でもさ。
二人きりの時くらい、翔の本当の気持ち、知りたいな。」
翔「・・・もう、俺もさ。高校生だし。もうすぐ17だし。
湯対馬も高校夏休み明けから入ってくるわけだから、ずっとお兄ちゃんっていうのは、もうやめようかなって。
それに。お、おれ。に、にいちゃんの事。す、すき。だから。」
蘭夜「そっか。お兄ちゃんは恥ずかしいか。翔が、そういうなら、お兄ちゃんは構わないよ。」
すると突然兄貴と唇が触れ合った。
翔「あに・・・き?」
蘭夜「翔は、嘘をつくのが上手だね。」
翔「・・・俺だって、甘えたいよ。甘えたいけど。二人の前で甘えるなんてできるわけないじゃん・・・!」
蘭夜「翔?」
翔「なに・・・。」
その時だった。
頬を兄貴に叩かれた。
痛かった。
でも、嫌じゃなかった。
だって、兄貴は。
泣いていたんだ。
蘭夜「ごめんな。ごめんな翔。お兄ちゃんのせいで。でも、もう我慢しなくていいんだ。だから、お兄ちゃんだけには。お兄ちゃんだけには甘えて欲しい。二人が至っていい。お兄ちゃんはお前達の望みを叶えてあげたいんだ。だから。お兄ちゃんを・・・頼ってくれ。」
そんな事・・・そんな事言われたら・・・頼りたくなっちゃうよ。
翔「・・・お、おにい、ちゃん。あ、あのね、僕、欲しいゲームがあるの。買ってくれる?」
蘭夜「あぁ。買ってやるさ。」
あぁ。なんだろう。これが、心が軽くなる。という事なんだろうか。
胸の中のわだかまりが。もやもやが。苦しみが消えて体も楽になった。
お兄ちゃんは、こんな僕でも、優しく、暖かく守ってくれる。
偽りの自分という鎖から、救ってくれた。
あぁ、やっぱり。お兄ちゃんには、敵わないな。

四章終わり。次回5章一話秘密
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