障害兄弟の日常

□夏休みと遊び
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二話 夏休みと風邪とおつかい計画。
7月10日。
それは、小中高生が待ちに待った夏休み。
高校1年生の翔は朝から宿題もせずにリビングで携帯をいじっている。
かと言って、宿題をしなさいっ!
とも言えない。
宿題をしなさいと言うと、翔は決まってへりくつを言う。
翔「今やろうと思ってたのに。」
主にこれを言われる。
なので、基本言わない。
後々色々困るのは本人なのだから。
湯対馬は中学3年生で、宿題は一応あるにはあるが、普通の中学生と比べて、量は少なめ。
煉斗は小学6年生。
宿題の量は普通だが、苦手な英語をさぼりそうな予感。
今僕は台所でみんなの朝ご飯を作っている。
メニューはお味噌汁とご飯とポテトサラダとミートボール。
ご飯は昨日の夜に予約炊飯で7時に炊ける用にセットしておいたので、問題はない。
味噌汁も、ポテトサラダも作ってある。
あとはミートボールだけだが、お湯で温めるだけなのだ。
先に二人を起こしに二階に上がり、蘭夜は先に湯対馬の部屋に入る。
湯対馬はベッドの中ですーすーと寝息を立てながら眠っていた。
蘭夜は湯対馬のオムツを確かめる。
蘭夜「ん、やっぱり濡れてるか。」
蘭夜は近くの棚からウォッシュティッシュを取って、タンスから熊の絵が描いてあるパンツを一枚出す。
蘭夜は湯対馬の両足を持って上に持ち上げ、ウォッシュティッシュでお尻の周りを拭く。
湯対馬「うぅん・・・。」
蘭夜「ん、起きたかな?」
湯対馬は目をこすりながら寝ぼけた顔で、蘭夜を呼ぶ。
湯対馬「にーにぃー・・・。」
蘭夜「後少しで終わるから我慢してな。」
蘭夜はパンツを履かせると、湯対馬を抱っこする。
蘭夜「ほら、湯対馬、おっきしような。」
湯対馬「うぅん・・・。」
次に煉斗を起こしに行く。
部屋に入ると、煉斗は熊の人形を抱きしめて寝ていた。
蘭夜「ほら、煉斗も起きて。じゃないとご飯冷めちゃうよ。」
煉斗「うぅん・・・。兄ちゃん抱っこ・・・。」
蘭夜は浅くため息をつくと、煉斗を抱っこして、部屋を出る。
部屋を出ると、二階から一階のリビングに降りて、二人をテーブルの椅子に座らせる。
蘭夜は鍋の中に水を入れて、火にかける。
その間、小さなタオルをお風呂場から一枚取って、濡らして絞り、湯対馬や煉斗の顔を拭いてあげる。
お湯が出来ると、ミートボールの袋を鍋の中に入れて温める。
蘭夜「翔ー、ご飯できるからおいでー!」
翔「はぁい。」
蘭夜は温めたミートボールをお皿に一人一袋分出すと、ご飯をよそって、お味噌汁を三人分を注ぐ。
翔「いただきます。」
湯対馬「いただきます。」
煉斗「いただきまぁす。」
三人がご飯を食べている間、蘭夜は洗い物を洗濯機にかけて、掛け布団を干して、三人が食べ終わったお皿を洗ってなどなど。
蘭夜の朝はとても大変なのだ。
朝ご飯を食べ終わった湯対馬が、またいつものようにズボンを掴んでついてくる。
ついてくる事に関しては問題はないが、多少歩きずらい。
11時が近くなると、湯対馬を連れて、よく行くスーパーで買い物をする。
勿論、エコバッグは持参する。
夏になると、どこのスーパーなどでも、冷やし中華が販売される。
しかし、蘭夜の狙いは割引されているラーソーメン。
湯対馬を片手で抱っこしてカートにカゴを一つ乗っけて急ぎ足で割引コーナーに向かう。
運良くなのか、悪くなのか、誰もまだラーソーメンの割引を買っていない。
ラーソーメンを6袋ほど入れると、薬味として、刻みネギや刻み海苔を買う。
次は何を買おうかと辺りをうろうろしていると、アイス売り場の方をじーっと見ている湯対馬を見て、アイス売り場に行くと、湯対馬が蘭夜にうーうー言い出した。
蘭夜は何かを伝えたいけれど、上手く言えない時は、よくうーうーと言う。
そんな時は、少し時間をかけて、話を聞いてあげる。
蘭夜「どうしたの?湯対馬。何か欲しいの?」
すると湯対馬は頷く。
蘭夜は湯対馬や煉斗、翔の好みは知っている。
だから、蘭夜は湯対馬が欲しいアイスがすぐにわかった。
持ち運びが出来るヌーリックだ。
蘭夜「湯対馬これ?」
ヌーリックのバニラ味を見せると、湯対馬は早くちょうだいと言わんばかりに手を伸ばす。
蘭夜「アイスは溶けちゃうから、最後に買おうね。」
そう湯対馬に言うと、ヌーリックを元の場所に戻すと、湯対馬が泣き出す。
湯対馬「ふぇ・・・ふぇぇ・・・ぐずっ。」
蘭夜「よしよし湯対馬、後でちゃんと買ってあげるから。ね?泣かないで。」
蘭夜はそう湯対馬に言い聞かせる。
すると、湯対馬は泣き止む。
蘭夜は海老のかき揚げを6個容器に入れ、ヌーリックもカゴの中に入れて、レジに並ぶ。
順番になると、湯対馬を一度下ろして、お金を払い、カゴをカートにもう一度乗せ、荷物を袋に入れる為、荷物置き場でエコバッグに買った物を入れ、ヌーリックは湯対馬にあげる。
エコバッグを肩にかけて、湯対馬を抱っこして家に帰る。
家に着くと、12時を過ぎていて、すぐにご飯を作らなくてはいけない。
湯対馬を椅子に座らせ、大きな鍋に水を入れ、火にかける。
すると、湯対馬がうーうー言い出す。
蘭夜「どうしたの?湯対馬。開かないの?」
湯対馬は一生懸命蓋を開けようとしている姿を見せていたので、わかった。
蘭夜「かしてごらん。」
蘭夜はアイスの蓋を開けると、湯対馬に返す。
蘭夜「ほら、開いた。」
湯対馬「ありがとうにいに。」
蘭夜「はい、どーいたしまして。」
蘭夜は微笑みながら湯対馬の頭を撫でる。
蘭夜はお湯の沸騰する音が聞こえると、エコバッグからラーソーメンの面を3袋分茹でる。
火を弱火にして、麺を入れるお皿とめんつゆを入れるお皿を出す。
そして、麺が茹で上がると、ざるに移して、よく冷やし、お皿に盛る。
蘭夜には実は今日、おつかいを頼もうと思っていた。
実は湯対馬や煉斗には、おつかいに行かせた事がない。
もう大きいので、大丈夫だとはわかっているのだが、事故などが多く発生しているなどの理由で、行かせなかったのだ。
蘭夜は元警官。元とは言っても、一年でやめてしまった。
やめてしまった理由としては、仕事と家事を両立しようとすると、身体が持たなくなってしまったというのが、本人の一番の理由らしい。
自分の昔の上司は今住んでいる地区の一番偉い人間になっている。
と、余計な話は置いておいて、蘭夜のおつかい計画が始まった。
計画はこう。
お昼を食べた後、翔が出かける。
出掛けた後、蘭夜がわざと倒れる。
そして、湯対馬と煉斗にうどんの麺とうどんの元を買ってきてもらう。
という計画だ。
お昼を食べ終えた翔は、15分ほど経って遊びに行った。
蘭夜は計画を開始した。
朝に洗濯機で洗濯した洋服などを干し終えて、一度ソファーに座り、咳をする。
蘭夜「けほっけほっ。」
その声に湯対馬が反応して近ずいてくる。
湯対馬「にーに。」
蘭夜「どーした・・・?」
蘭夜はわざと苦しそうな表情と声で湯対馬と話す。
湯対馬「だいじょーぶ?」
蘭夜「ちょっと苦しいかな・・・。」
実際、苦しくもなんともないのだが。
湯対馬は蘭夜をソファーに寝かせる。
湯対馬「にーにねんねしてなきゃだめだよ。」
蘭夜「うん・・・、でもたぶんすぐに治るよ。」
そこに煉斗が来た。
煉斗「兄ちゃん大丈夫?」
蘭夜「ちょっと苦しいかな・・・。朝ごはんとか食べてないから。」
煉斗「僕、兄ちゃんの分のご飯買いに行く!」
蘭夜「湯対馬も煉斗とげほっけほっ。お兄ちゃんのご飯一緒に買ってきてくれる?」
湯対馬「うん・・・。」
蘭夜「ありがとう二人とも。」
蘭夜は二人を抱きしめる。
煉斗「何買ってくればいい?」
蘭夜は二人を離すと、うどんの麺とスープの元を頼む。
間違えてお金が足りなくなるといけないので、3000円もたせた。
二人を家の玄関前まで見送る。
二人が行った後、若干不安に襲われる。
蘭夜「大丈夫かなぁ、誘拐されたりしないかなぁ。二人共可愛いから、連れて行かれそう。」
親バカ発動中だった。
煉斗と湯対馬はなんとかスーパーまでたどり着いた。
湯対馬は煉斗の手を掴んでひっばる。
かごを取って、うどんの麺を探す。
うどんの麺は野菜売り場の近くにあり、スープの元はその隣にある。
だが、二人が向かったのは、お菓子売り場。
ではなくて。
お菓子売り場から野菜売り場に移動し、うどんを探し始める。
煉斗「うどんうどん、にいにが元気になるうどん!」
そんな歌を歌いながら探していると、見つけたようで、一つでいいよって言われていたのに、二人は両方6袋買っちゃいました。
レジで会計を済ませてスーパーを出て20分ほどすると、家が見えてくる。
しかし、近くには誘惑の自販機。
二人は蘭夜に内緒で130円のジュースを二本買いました。
しかし、それを蘭夜は見ていました。
家のチャイムが鳴り、二人は家に帰ってきました。
蘭夜「ありがとー。お兄ちゃんこれでお昼ごはん食べられる。」
そう言って二人を自分の足の上に座らせ、頭を撫でる。
湯対馬「にーに、ねんねしてないとめっ!」
蘭夜「お兄ちゃん風邪治った。」
蘭夜は笑ってごまかす。
が、ジュースは誤魔化せさせない蘭夜。
蘭夜「そういえば、二人とも下の自販機でジュース買ったでしょう。」
二人はびっくりした顔をする。
蘭夜「兄ちゃん知ってるんだからなー。隠したってダメだぞー。」
二人は一斉に逃げ出すが、抵抗虚しく捕まる。
蘭夜「ほら、捕まえた。ジュース買ってもいいけど、勝手に買っちゃだめでしょう?」
二人は蘭夜の足の上に座って怒られている。
蘭夜「でも今日は二人ともがんばったからいいよ。」
湯対馬「にーに怒ってない・・・?」
蘭夜「うん、怒ってないよ。」
蘭夜は笑顔で答える。
二人はテーブルの椅子に座ってジュースを飲み、蘭夜はうどんを食べた。最初の時の予定とは違ったけれど、まぁ、いいか。 次回に続く
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