障害兄弟の日常

□湯対馬の憂鬱な時間
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二話 自分の存在意義と価値

陽悠「ところで、湯対馬君はお兄ちゃんと喧嘩とかでもしたの?」
僕は首を横に振った。
陽悠「んー、じゃあ、何か嫌な事言われた?」
僕は一瞬だけ迷った。陽悠兄ちゃんには、わかったみたいで。
陽悠「お兄ちゃんに嫌なこと言われたんだね?」
僕は仕方なく頷いた。
陽悠「どんな事言われたのか、お兄ちゃんに教えて欲しいな。」
湯対馬「・・・お、お兄ちゃんに、あの、お話してて、お話してたら胸が苦しくなって、翔にいに抱きついてそれから、家でして、その後はあの。その。」
陽悠「で、起きたら病院にいて、逃げてきたんだね?」
僕は頷いた。
陽悠「じゃあね?今から、ちょっと苦しい所通るから、苦しくなったら言ってね?」
湯対馬「うん。」
陽悠「お兄ちゃんとお話してた時に怖くなったんじゃないかな?」
どきっとした。
でもその通りだ。
僕は頷いた。
陽悠「家出する時に、こう思ったんじゃないのかな?自分がいなくなっても誰も困らない。自分には存在価値とか、意義なんてないんだって。」
うっぐっ。
ちょっと苦しい。
でも、当たってる。
陽悠「大丈夫?少し休憩しようか。」
僕は頷いた。
20分くらいすると、また、話を始めた。
陽悠「湯対馬、あのね。人の存在価値とか、意義なんて、だぁれにもわかんないんだよ。お兄ちゃんだって、たまぁに、何で俺こんなことしてんのかなぁとか、なんで生きてんだろうなぁって思うことあるんだ。」
湯対馬「そうなの?」
陽悠「そうさ、湯対馬の兄ちゃんはきっと自分で見つけたんだよ。」
湯対馬「自分・・・で?」
陽悠「そ、湯対馬達を守るっていう存在意義と価値をね。」
僕達を守る・・・。
それがお兄ちゃんの存在意義と価値。
陽悠「それにどんな意義と価値があるのかは、お兄ちゃんに直接聞いてみなよ。」
すると、インターホンが何度も鳴る。
陽悠兄ちゃんは玄関を開けた。
そこにはお兄ちゃんがいたんだ。
蘭夜兄ちゃんが。
蘭夜「湯対馬・・・よかった。」
兄ちゃんは急いで靴を脱いで僕を抱きしめてくれた。
蘭夜「よかった、よかった。無事で。」
兄ちゃんは泣いていた。
湯対馬「ねぇ、お兄ちゃん。」
蘭夜「何?湯対馬。」
言わなきゃ、頑張って言わなきゃ。
湯対馬「えっぐひっく、ごめんなさぁい・・・。」
蘭夜「いいよ、湯対馬、もういいよ。湯対馬が無事ならお兄ちゃんそれでいいんだ。」
2時間くらいかけて落ち着いた。それからお兄ちゃんに聞いた。
湯対馬「ねぇ、お兄ちゃん。」
蘭夜「うん?」
湯対馬「お兄ちゃんは、僕達を守って何か良いことあるの?僕はお兄ちゃんの・・・」
蘭夜「何もないさ、何もない。普通の人からすれば、何も良いことなんてない。でも!兄ちゃんには、お兄ちゃんの家族は湯対馬達しかいないから・・・。守りたいんだ。湯対馬や、煉斗、翔の笑顔を。」
湯対馬「怖かったんだ。」
蘭夜「えっ?」
湯対馬「お兄ちゃん達に嫌われてるんじゃないかって。だから、ずっと側にいて、離れないようにしてた。そうすれば、お兄ちゃんは、僕の事、嫌いにならないでくれると思ったんだ。
ずっと、側にいれば、お兄ちゃんに、ぐすっ、えっぐ。うわあああん!」
僕はそれからの記憶がなかった。
気付いた時にはもう、家の自分の部屋にいたんだ。
起きたら隣にはお兄ちゃんがいてくれた。
ぎゅっとお兄ちゃんを抱きしめたんだ。
そうしたら、お兄ちゃんが抱きしめてくれたんだ。
僕はお兄ちゃんの温もりに包まれたまま、また、眠りについた。

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