short story

□気づいた恋
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クラピカ「…………っ」




しかし、いくら待っても痛みが来ない。

自分にも気を失ったイスガの身体にもケガはなかった。

不思議に思って顔を上げると、目の前にシオンの後姿があった。

真っ白な地面には、鮮やかな赤い雫がにじんでいた。


シオン「……っ」

クラピカ「なっ……。シオン、お前……」



シオンの右腕には大きな傷が出来ていた。



シオン「大丈夫? クラピカさん……イスガ……」

クラピカ「なぜ……なぜ、私をかばった!?」




シオン「……クラピカとセンリツが私の面接官をした時……言ったよね」
















≪我々が君の面接官を担当するクラピカだ≫

≪わたしはセンリツ≫








≪では最後の質問だ。この仕事での心意気……のようなものを聞かせてくれ≫

≪心意気……そうですね……仲間を絶対に怪我させないように全力で戦うつもりです!!≫






≪センリツ……。彼女、どうだ?≫

≪心音にも乱れはないから本音だわ。私は彼女、採用してもいいと思うわ≫

≪そうか。私もそう思う≫




≪シオン。キミを今日付けで護衛団に採用する。私が護衛団のリーダーだ≫

≪よろしくお願いします!≫

≪同じチームなんだから敬語は使わなくていいわ。よろしくね≫

≪はい……あっ、うん! よろしく! クラピカさん! センリツ!≫

≪何故、私だけさん≠ネのだ?≫

≪上司を呼び捨てはさすがに……≫

≪……まあいい。よろしくな≫









シオン「仲間は絶対に傷つけさせないって……」


シオンはクラピカの方を見ずにそう答えた。

その間にもシオンの腕の傷からは血が滴り落ちている。


シオン「それよりもこの状況を何とかした方がいいよ」

クラピカ「だがその怪我っ……そうだな」

シオン「とりあえず、イスガはセンリツに任せようよ。残りがこの人数なら私たち2人でもなんとかなるよ」

クラピカ「そうしよう。センリツ! イスガをそっちに移動させてくれ」


センリツは騒音の中、クラピカの声が聞こえるようでOK≠フサインを見せた。

それと同時にシオンは動きだし、また敵に立ち向かって行く。

クラピカもそれに続くように動き出した。






クラピカは戦いながらもシオンから目を放せなかった。

腕から出る血がシオンの動きに合わせて宙を舞い、シオンは軽やかに、力強く戦っていた。


空に浮かぶ白い雪が彼女を取り巻き、いつの間にか見とれてしまうほどに…………。










20分後

ようやくマフィアの手下を倒したシオンとクラピカがいた。


シオン「ふぅ〜、終わったー!」

クラピカ「なんとかな」

センリツ「シオン! クラピカ! 大丈夫!?」


センリツの声が少し離れた車の所から聞こえた。






シオン「うん! 大丈夫だよー!!」

クラピカ「何を言っている!! 全く大丈夫では無いだろう!」


シオンが ニカッ! と笑っている中、クラピカは怒りの気持ちが混ざりながら心配していた。

そうして気を失っているイスガを助手席に乗せ、センリツが後ろに座り、シオンの手当てをしていた。



センリツ「消毒するから動かないでね」

シオン「い……痛い痛い痛ーい!!」

クラピカ「そのくらい我慢しろ」






クラピカは少しイライラしていた。

守らなければならないはずの、何よりまず女性に守られたのだ。

申し訳ないというか……自分を情けなく思えてしまう。


シオン「まぁ、これ位すぐに気合いで治すよ!」

クラピカ「お前は2週間、デスクワークだけだ」

シオン「えっ!? それはやめて! 護衛の仕事やりたいよ……イテテテテ」

センリツ「クラピカの言う通りね」









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