short story
□サクラと栞
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シオンに想いを伝えたのが12月だったから…………4ヶ月もたったのか。
4月になると春の象徴である桜が並木道に咲き乱れ、私たちの歩いている道には桜色のカーペットが敷かれていた。
今日も無事に仕事を終えて、私はセンリツとバショウの3人でノストラード邸に帰るところだった。
バショウ「ここの桜、満開じゃねぇーか」
センリツ「本当にきれい。たまには車を使わずに歩くも良いわね」
クラピカ「…………」
センリツとバショウが桜に歓喜の声を上げている中、クラピカは物思いに更けているようで、会話に相づちも打たずに桜を見上げていた。
バショウ「シオンと2人でこの桜並木を歩きたい≠ニか考えてんのか〜?」
バショウの言葉に反応して、勢いよく2人に焦点を合わすクラピカ。
クラピカ「そ、そんなわけ……ないだろう……」
見事に的を射られて言葉を詰まらせていた。
そんなクラピカを見て、センリツはニッコリと微笑んでいる。
センリツ「シオンと付き合い始めてから変わったわね。心音がいろいろなリズムを奏でるようになったわ」
バショウ「……おっ! 噂をすれば。あれ、シオンじゃねぇか?」
クラピカとセンリツがバショウの指さした方に目をやると、前方に彼女の後ろ姿が見えた。
彼女は付き合う前と比べると少しファッションに目覚めたようで、スカートをはくようになっていた。
前まではジーパンにパーカーだったお前がな……。
クラピカは穏やかな表情を彼女の背に向けていた。
しかし…………。
センリツ「あら……隣にいるのは…………イスガかしら?」
桜の舞う中、シオンの隣にいるのは確かにイスガだった。
そしてシオンは右手に小さな紙袋を下げて、イスガと足並みをそろえている。
満天の笑みをイスガに向けて。
急に私の中にある泥が舞ったように感じた。
顔が少し険しくなるクラピカ。
その感情がどういったものかを知っているのは、心音を聞きとれるセンリツのみ。
バショウ「あ、あれってイスガがシオンに買ってやったの……か…………?」
センリツ「クラピカ?」
バショウ「アイツ等に声かけなくていいのか!?」
センリツとバショウの声を無視したまま、シオン達の横を通り過ぎていった。
会話で夢中なのか全く気付く様子がない2人。
そんなところを見せつけられて悲痛な顔をしているクラピカ。
センリツとバショウはどうすれば良いのか判断できず、クラピカを追いかけるように走っていった。
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