STORY

□押し込む。
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君の優しい性格が好きだ。

包み込むような甘い声が好きだ。

長い睫毛、キュっと上がった
口角、
綺麗な横顔が好きだ。


でも、言わない。

この気持ちはずっとずっと
僕の中に閉じ込めておくんだ。

それで、いいんだ。




「ヒョン、今日の夜ご飯
何かリクエストあります?」

今日の仕事は全て終え、
宿舎のソファでくつろいでいると
なんでも作りますよ、 と
にこにこと微笑みながら
僕の隣に腰掛ける。

自分もあまり料理が得意では
ない筈なのに、いつもこうやって
甲斐甲斐しく聞いてくれる彼。

僕は君のそういう優しい所が
大好きなんだよね。

もちろん口には出さず、
ぐっと心の中に押し込むけど。

「何でもいいよ〜。
ジョンデが作ってくれるなら
全部美味しいもの。」

そう言って微笑み返せば、
何でもいいが一番困るのに…
そう呟きながらキッチンへ向かった。

大丈夫、バレてない。



言ってしまえば楽だと思う。
このどうしようもない気持ちを
伝えて、砕けた方が
楽なんだと思う。

だけど、僕たちはメンバーだから。
かけがえのない兄弟のような
関係だから。

だからこそ、
フられたくない。
傷付きたくない。
彼に軽蔑されたくない。


だから、楽にならなくたって
気持ちは伝えないのが
正解なんだ。


ソファに寝転び、
痛いほどクッションを
抱きしめた。

「ふあぁ…」

日々の疲れが効いたのか、
大きなあくびをすると
すぐに僕は眠りに落ちた。




「…あれ、ヒョン寝ちゃったの?」

持ってきた鍋を机に
置いて、ヒョンの隣に座る。

最近は休憩もさせて
貰えないような日々が続いて、
タフなヒョンでもきつかったんだろう。

せっかく作ったのに、
という愚痴は今日のところは
押し込んで、その代わりに
寝ているヒョンを観察する。

あ、にきび出来てる。

ほんと肌白いなあ。

また、痩せた?

起こしてしまわない様に
そっとヒョンの頬に触れる。

「ごめんなさい。ヒョン。」


知らない振りをしている。
ヒョンのその気持ちに。

「もう少し頑張って、
俺にちゃんと伝えて…」


ヒョンはまだ迷って
いるでしょう?
メンバーだから、
兄弟のような関係だから、
その関係が壊れる事を
恐れているでしょう?

自分が引っ張って行く事が
正解なのかも知れない。
だけど、ヒョンに決めて欲しい。

自分となら幸せになれると。
そう確信して欲しい。

辛い道でも、自分となら
いいと思って欲しい。

結局、不安なんだ。

自分も、ヒョンも。


「…ヒョン、
大好きです。」



貴方のその気持ちを
俺に力一杯ぶつけてよ。


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