STORY
□初夏の。
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うだるような暑さから逃れるように、
こもった生温い空気を逃すように、
ささくれた木の窓が大きく開けられている。
その暑さを追いかける様にしてアイスブルーのカーテンは大きく波を打つ。
逃げた暑さは飛び込むように青い海を波打たせた。
目の前の職員はそんな暑さを自分だけ感じないかのように、ひたすら本を並べる。
まるでこの部屋に自分一人しかいないかのように本だけを見ている。
顎先から汗が落ちる。
それはまだ開いただけの真っ白なノートに、小さな窪みを作る。
彼の顎先からも汗が落ちた。
それと同時に、彼が俺を見る。
彼が、俺に気付く。
「こんにちは。」
彼の額から流れた汗は、笑窪へ沈んでいった。
初夏、俺は、
こむらがえりのような恋をした。