魔法の国の作り方

□第三章
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先日の出来事のお陰か、更に宣戦布告が6枚文書で届いた。
そして、怪しい戦闘機が島の周りをうろつき始めた。
向こうは随分殺気立っているのが見て取れる。
それでも、攻撃をしてくる様子は無い。
うっとおしいが、何もして来れないうちは放っておくに限る。
そんなことよりも今日はプロイセンが教官だ。いやだなぁ。
そんな事をぼんやり考えていると、ドイツが結界を出る為の小船に乗り込んでいるのが見えた。

「フランス兄ちゃんと戦争するんだって」
「そうなのか」
「大丈夫だよ。ドイツすっごく強いもん」
「そう…」

それでも心配だった。やっぱり、俺って平和ボケしてるんだろうな・・・。
なんとなしに目をやると、さっきから飛び回っている戦闘機が旋回しているのが見えた。
嫌な予感がしてほうきに駆け上がって飛び出した。
戦闘機はまっすぐ小船に向かっている。
今日来ているのは戦艦ではなく、ここに物資を運びに来た輸送船だ。
あの戦闘機が結界から出た所を狙うのなら上空からの空爆だろう。

俺は姿勢を低くして、速度を更に上げる。
戦闘機は俺に気付き、高度を低くしての対空攻撃で船を狙う動きをした。
俺は杖を出し、戦闘機の頭を全力で上げた。
ほんの僅かに傾いた戦闘機は攻撃を上手く当てる事ができず高度をあげて二撃目のために旋回をした。
相手の目の前で引き寄せて、杖で横殴りの突風を生み出した。
俺のちょっかいに、戦闘機は俺にターゲットを変え、後を追って攻撃を仕掛ける。
撃ってくる弾の感覚は訓練より圧倒的に速かった。
俺は仕方なく急上昇して宙返りをするようにスピードを下げ、戦闘機の後ろを取る。
そして、杖でガラスを水に変える魔法をかけてから機体に近づく。
水を全身に受けてびしょびしょになりながらも、操縦士に掴みかかり座席ごと戦闘機の外に放り出した。
主人のいない戦闘機は海面にぶつかり轟音を立てて大破した。

とりあえず、武器になるものは全て預かり拘束して島に連れ帰った。
島に戻るとプロイセンが楽しそうな笑顔で寄ってきた。
一度敬礼してから現状を報告する。するとプロイセンは操縦士の顔をまじまじと見つめると俺に向き直った。

「良くやった、名前。褒美に今日は一日休め」
「あ、ありがとうございます!…ですが、よろしいのですか?」
「あぁ。咄嗟にしては良い判断だった。それに、今日はこいつに用がある。尋問室はあるか?」
「楓に相談してきます。場所はどこが好ましいですか?」
「出来れば地下に作ってくれ。こいつが逃げ出したくても叶わない位の絶望的な雰囲気の奴を頼む」
「ヤー!」

「地下に牢獄?良いよ。ちょっと小細工すればプロイセンさんもきっと気に入る物が作れるから」
「…ちょっと小細工?」

多少嫌な予感はしたが、俺は楓を信じて作るのを手伝った。
そして、家のそばに離れが完成し、その地下には楓のアイデアと魔法満載の牢獄と尋問室が出来た。
楓は俺とプロイセンを連れて施設を説明して回った。

「ここは尋問室。必要な物は後から私に頼んで下さい。出来る限り希望通りに作ります」
「薄暗くて良いな。…?ここのドアはなんだ?」
「最後にご説明しますね。先に牢獄を案内させて下さい」

そういって楓が案内したのは大きな扉の先にある牢屋だった。
三つの牢屋があり、そのうちの一つは例の操縦士が入れられている。
なんとなく俺はその兵士を直視できず楓をなんとなく見つめた。

「三つで足りるのか?」
「ここは、この空間に居る人数に合わせて牢屋が増えます。今は私が鍵を持っているので名前とプロイセンさんがカウントされています」
「じゃあ、どんどん増えていくって事か」
「はい。ここの空間にいくつもの強力な魔法をかけて、術者が居なくても機能するようになっています」

俺がここを作るのに手伝った魔法は他言語が通じる魔法と空間制御の魔法と、あと一つ。
その一つが俺からしてとても嫌な予感がしてそわそわするのだ。
そして、その一部にプロイセンが気付いた。

「この牢獄の扉は鍵が付いていないのか?」
「それについては尋問室にて説明します」

楓の声は少し楽しそうで俺はどんどん怖くなる。
楓の開いた扉が後ろで閉まると俺達はまた尋問室に入った。
そして、楓はさっきのドアの前に立って説明を始める。

「ここの扉を支配する鍵は今私がつけているこの指輪です。この牢獄のドアノブと指輪の金属が反応する魔法をかけています」
「俺がな」
「そして、この牢獄に入れられている兵士が脱獄を図った場合、具体的に言うと指輪のない状態でドアノブに触れるとこの牢獄に囚われます」
「牢獄に囚われる?」
「はい。牢獄が脱獄を察知したとき、その扉の先は罪人の部屋に繋がります。
もちろん、壁や床を何らかの方法で壊し掘り進んでもやがてこの部屋に辿り着きます。
罪人の部屋には何もありません。外への出口も、光も希望も与えないように魔法をかけています」
「俺がな」
「その脱獄した奴はそこで餓死するのか?」
「そこら辺はお好きにして頂けます。もし、特別に罰を科すのならこのドアを指輪を付けて開ければ脱獄者のところまで案内してくれます」

嫌な予感はやっぱり当たった。
空間を用意したのは俺で縫うように繋いだのは楓だったが、楓の発想は怖すぎる。
出たくても叶わない位絶望的な雰囲気とは言ったけど、ここに入れられれば絶望しかない。

「どうですか?牢獄などを作ったのは初めてだったので欠陥等はありますか?」
「完璧だ。俺様の現役時代に欲しかった位だぜ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」

楓とプロイセンのこういう好みは似通っているのかもしれない。
頼まれて作る分には良いが、自発的に拷問器具などを作らないように見張っておかないと。
どうせ、個人で作った分は俺で実験するに決まってる。














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