魔法の国の作り方

□第四章
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あれから二週間くらい経ったころ、俺はまたショックな事があってソファでふてくされていた。
飲み水として使っていた、この島で唯一の川が泥で濁っていたのだ。
それだけに飽き足らず、大事にしていたリンゴの木が一本、実験という名のもとに枯らされた。
どうすればそんな事が出来るか分からない。
何も飲みたくないし何も食べたくなくなった。

そうしているといつの間にかうつぶせになって寝ていたようで俺は誰かに揺すられて起きた。
目だけで相手を見ると、金髪ひげ野郎が立っていた。

「Bonsoir.」
「何言ってるか分かんねぇよ」

と言ったところで通じるわけでもない。
仕方がないから寝ようと目を閉じると、しつこく俺を起こしてきた。
無視だ、無視。起きてもどうせ話も出来ない。

「そんなに拗ねるなよ」
「あ?」

いきなり聞こえた日本語に振り向くとフランスはオレンジに輝くネックレスを持っていた。
まさかと思って触れると、確かに楓の魔法である事が分かった。
フランスはそのネックレスを俺に掛けた。

「楓ちゃんに会って、君に会いに行くって言ったら作ってくれたんだ。身につけておくと良い」
「…で?何しに来た。島のことなら全部ロシアに言ってくれ」
「君に会いに来たって言ったろ?」
「じゃあ、なんだよ」
「ここに閉じこもってないでしばらくお兄さんの所に来ないか?」
「断る。今日はこれ届けてくれてありがとな。大事にするって伝えてくれ」

俺はそう言って寝室に行こうとするとフランスは俺の手を掴んで玄関へ引っ張っていこうとする。
俺は全力で二階へ行こうと踏ん張った。

「そんな冷たい事言うなよ。絶対一人で居るより良いからさ!」
「うるせぇ!今日は一人で居たいんだよ!」
「なんだよ!慰めようと誘ってんのに!」
「頼んでねぇ!敵だった奴で!しかも野郎に慰められても嬉しくねぇよ!」
「そう言わずに!絶対後悔させないから!」

結局、日をまたいでまでフランスに行く事になってしまい、俺は寒い夜の街をフランスと歩いた。
やっと着いた家は日本の家屋に比べてかなり広く、少し構えてしまった。
フランスの後ろについて中に入ると、趣味の良い飾りがあってほんの少しだけ感心した。

「リビングで待ってて。なんか作って持っていくから」
「わ、分かった。」

俺は言われたとおりに廊下を進むと、リビングと思わしきドアをそっと開けた。
すると、中に居たアメリカとイギリスと目が合った。
すぐに閉めて玄関に向かって走る。
しかし、感づいたフランスがまたそれを阻止した。

「ふざけんな!何が後悔はさせないだ!来て損した!帰る!」
「落ち着けって!折角ここまできたんだ。お茶でも飲んで行ってくれよ」
「嫌だ!放せ!お茶なんて二度とのまねーよ!」
「暴れるなって、ほら。今日は国とか無しにして楽しもうぜ?」
「絶対に罠だ。これ以上何を奪おうってんだよ」
「拗ねるなって」

そう言いながら俺をリビングに入れて椅子に座らせた。
前のような細工が無いのを確認して俺は居心地の悪いテーブルに着いた。
目線を合わせないようにずっと横を向いていたが、イギリスは構わず話しかけてきた。

「あれからあのナメクジはどうしてるんだ?」
「除草剤とか薬に使ってる」
「それ、本当に効くのかい?俺にはとても信じられないよ」
「まぁ、ナメクジだからな」

そんな話をしていると、フランスが料理を持ってきた。
全く見たことない料理だ。けど、イタリアが作っていた料理と雰囲気は似ている。
フランスは気を利かせて、ナイフとフォークの他にお箸を用意してくれた。

「なんだ名前。君はナイフとフォークつかえないのかい?」
「普段はいつも箸だから慣れなくてな。フランス、ありがとう」
「いいよ、今度お兄さんが教えてあげるからさ」
「そうだぞ、国の代表が食事で困るなんて事あっちゃいけないからな」
「…そうだな。練習しないと」

こういう風にお呼ばれしても恥かいちゃうもんな。
他の三人が手をつけたのを見て俺も箸をつけた。
慣れない味だが美味しい。俺は、三人の会話に相槌を打ちながら食事をした。
水と思って普通に一口飲んだ液体が強烈な匂いを醸しながら喉を焼いた。
俺は思わず、口を押さえた。

「あれ、どうしたんだい?」
「ワインが口に合わなかったかな?」
「ワイン!?バカ、こいつはまだ子供だろうが!」
「え!日本と同じくらいの見た目だからてっきり成人してるのかと思ったよ」
「アメリカ!笑ってないで手伝え!」

汗が滲むように体が熱い。めまいがする。
まさか、ワイン一口で自分がここまで酔うとは思わなかった。
もちろん、子供だが俺だってもう17だ。
ちょっと位こういうのに耐えれても良いのに、格好悪い。

アメリカは俺を抱えて寝室に運んで、フランスとイギリスは食事の後片付けをする事になった。
アメリカが俺をベッドに寝かせる頃には完全に意識が朦朧としていた。
毛布をかけてくれるアメリカの手をとって一番聞きたかった事を聞いた。

「アメリカ、楓は元気なのか?」
「もちろんだ。すぐに機嫌は悪くなるけど元気だよ」
「そうか、なら良かった。もし、楓を泣かせたらすぐにお前をかぼちゃに変えてやるからな」
「分かったよ。約束する」

しばらくして、イギリスとフランスが様子を見に来た。
水で冷やした手を頬に当ててくるが、それを掴んで首に当てると涼しくて気持ち良い。
眠いくせに頭が痛んで眠れない。
そんな俺を囲んで三人は話し始めた。
気を紛らわせるには丁度良く、俺もそれに耳を傾けていた。

「楓は俺がちょっと冗談を言うとすぐに怒るんだ。名前はそんな人じゃないって」
「なんて冗談言ったんだよ…」
「そういえば、君の所でお世話になったパイロットが居たろ?」
「あの、ネックレスの奴か?」
「そうだよ。先週彼女と結婚したってさ」
「そっか、それは良かった。あの日の海はとても冷たかったんだ」
「もぐったのか?よくやったな、そんなこと」
「まるでヒーローじゃないか!」
「ヒーロー?」

俺はそこから先の記憶が無い。
朝起きたときに頭痛が引いていたから二日酔いは無かったようだが、一日中体の気だるさが抜けなかった。
もう大人になるまではずっと飲み物に気をつけよう。














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