魔法の国の作り方

□第一章
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アメリカが家に訪ねてきてから、早一週間。家はあれから更に大きくなった。
二階ができ、レンガ造りになった。更にキッチンにかまどが増えた。
楓は物を作るほうが向いているらしい、次々に少しの材料で沢山の日用品を作り上げていく。

「見て、名前。捕まえた鳥の羽からセーターを作ったよ!」
「すごいな、これから寒くなるだろうからな。これで安心だ」
「手袋と靴下とコートも作るよ」
「そんなことしたら鳥が丸坊主になっちゃうんじゃないの?」
「そうだね・・・、コートは止めようかな」

そういう俺は家の横に生えたリンゴを収穫して、ジュースにしたり木を増やしたりして自分の好物を堪能していた。
このリンゴをついばみに来る鳥が落とすフンは新しい植物を産み、この島に緑を増やした。
なぜか、不思議な草が生えてくるがその特性を調べるのも楽しみの一つだ。
そして、俺のもう一つの仕事は釣りだった。
糸のついてない釣竿をもち、少しずつ海の水を操って魚が泳いでくるのを待つ。
魚がこの竿の真下に来たら、吊り上げるときのそれのように竿を引き上げる。
そうすれば魚も一緒に海から引きあがり、魚が釣れる。

「私の知ってる釣りと違うんだけど」
「そりゃ、魔法だから」

料理の出来ない楓の代わりに俺が魚を料理する。
女子の中ではこれを女子力というらしい。
そして、テーブルについて食事をしているとき、また胸騒ぎがした。
誰か来た。そう直感で知らせる体はひとりでに外へ出ていた。
外には誰かが、立っている。

「誰だ?敵か?」
「Ciao!おれイタリア、友達になりに来たんだ」
「・・・は?」

また変な奴が来た。
名前から考えてイタリア人なのだろうか、とりあえず敵ではないと言う事で家に上げる。
この男は人懐っこく笑うだけで一切、領土の話や難しい話をしなかった。

「あ、食事中だったの?ごめんね」
「いや、構わないけど、お前も食べていくか?」
「うん、俺パスタ食べたい!」

とんでもないマイペース野郎だ。
パスタは無かったが、夕飯を分けて出してささやかながらもてなした。
そして食後、客間など無いこの家の空き部屋を何とか人が寝られるように準備して戻ってくると、こんな会話が聞えてきた。

「ねぇ、君名前は?」
「私、楓。海外でメープルの意味なんだ」
「へぇ〜、美味しそうな名前だね。僕イタリア。今日は君と出会えた記念日だよ」
「そ、そんな、大袈裟すぎるって・・・」
「そんな事無いよ、こんなに可愛い女の子が居るなんてきっとこの国は良い国なんだね」
「もちろん、いい国だぜ?さぁ、客間は用意してやったぞ」
「ありがとう!じゃあ、俺は寝るよ。これ俺の名刺、電話してくれたら嬉しいな」
「・・・ありがとう」

イタリアはとんでもないナンパ男だ。
俺は居た堪れなくなって会話を終わらせるように割って入った。
イタリアから貰った名刺を眺める楓を見ているとこいつも俺以外の話し相手が居て良いのかもしれないと思った。
なんとなしに見ていると、名刺の裏の文字に何か書いてあることに気付いた。

"If you find a Italy, Please contact me"

その更に下に、電話番号が書いてある。
何を書いているか分からないが、楓に教えると、イタリアの電話番号は表に書いてあると言う。
よく分からないが、電話してみようと楓に提案する。

「なら、この電話使ってよ。やっと完成したんだ」

そういって取り出したのはなんとか電話の形を成している物だった。
アンティークなデザインのくせにボタン式なのがなんとも中途半端な印象だ。
そっと持ち上げてみると結構重たい。

「なんだ?振ったらゴトゴト言うぞ?」
「近くに火山があるから掘り返してみたら、綺麗な石が出てきて・・・」
「火山を掘り返したのか・・・」
「そう。で、この石を箱に入れてたらたまーにラジオみたいな音が聞えてきて、色々してたら電話が出来たんだ」
「すごいな!?鉄塔も無いのにワイアレス電話なのか!本当に使えるのか?」
「うん。受話器をとってからボタンを押してみて」

石が空気に触れる面積でいろいろ変わるっぽいんだ。といった楓はとても賢く見えた。
とはいっても色々言われても俺にはちんぷんかんぷんだ。
俺の知っている楓はもうちょっと抜けてるはずなんだが・・・。
電話番号を間違えないように押して受話器を耳に当ててみる。
音質は少し悪いが、確かにかかっているようだ。
楓に、グッドサインを送ってちゃんと繋がっている事を伝えると、楓は手を叩いて喜んだ。

「・・・もしもし、こちらドイツだ」
「イタリアと名乗る男から貰った名刺に電話番号が載っていて電話したんだけど」
「あぁ、イタリアは今そちらに居るのか」
「今は夕飯を食べ終わって寝てる」
「そうか、迷惑をかけてすまない。今からそちらへ向かうので場所を教えてくれないか」
「えーと、先日で来た島だ。名前はまだ無くて・・・。」
「承知した。少し距離があるな・・・、明日の昼くらいには着くように行く」
「申し訳ないけど、こっちには船着場や波止場が無い。船とは別にボートで上陸する事になると思うが・・・」
「お気遣い感謝する。そちらへ行く際は小型の船を用意して行こう。それでは」
「あぁ、また明日」

ドイツって名乗ってたよな、今の男。やっぱり・・・、この一連で知り合ったあの男達は・・・。いや、さすがにファンタジーが過ぎるな。
今日は寝よう、明日も客人が来る用事が出来てしまった。
次の日がこの国初めての危機となることを知らない俺はベッドに倒れこむと泥のように眠った。














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