魔法の国の作り方

□第六章
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次の日、起きてすぐに着替えてアメリカさんの元へ向かった。
今日は会議があるのか、もう着替えてコーヒーを飲んでいる。
部屋に戻って家を出るまでやり過ごしたい気持ちを必死に抑えて歩み寄った。

「おはよう、楓」
「お、おはようございます。あ、あの。アメリカさん、昨日は取り乱してしまってごめんなさい」
「いや、いいよ。こっちこそ軽率な言動をしてすまなかったよ」
「本当にごめんなさい。次からは…」
「君はあれくらいの方が良いよ。ここに来てからずっと無理してるだろう?」
「え、いえ。そんな事は…」
「それに俺には敬語使わなくて良いんだぞ。君を雇ってるわけでもないんだし!」

そういってアメリカは会議に出かけてしまった。
雇っているわけでもない、アメリカさんは私とどういう関係になろうとしているんだろう。
勝利国が求める関係なんて服従なんかだと思ってたけど、違うのかな?
でも確かに、ちょっと背伸びをしていたかもしれない。
アメリカさんからああ言ってくれてるのだし、ちょっと肩の力を抜いてみようかな。
…とはいっても、掃除・洗濯・料理だけは完璧にしないと。名前に次にあった時にがっかりされたくない。
気を引き締めて杖を取り出して魔法をかけた。



お昼過ぎになってやっとエプロンを外そうとした時に玄関でチャイムが鳴った。
誰かと思って出てみると、金髪ヒゲ野郎だった。
何故かバラの花を持っている。

「こ、こんにちは」
「やぁ、可愛い姿だね。アメリカは居るかい?」
「すみません、今は外出してまして…」
「じゃあ、中で待たせて貰えないかな」
「はい、どうぞ」

飲み物をどうしようかと迷ったけど、とりあえずカフェオレを作って出してみると褒められた。
一体何の用で来たのだろう。きっと聞いてはいけない事なんだろけど、気になる。
せめて着替えようと席を外そうとすると話し相手を頼まれた。
別の部屋に行くのを阻止されたような気もするが、仕方がない。

「今度、お兄さん名前のところに行くんだけど何か伝えておく事ある?」
「え、あの島に行くんですか?」
「うん。今はあそこロシア領だし、魔法も禁止されてるから退屈なんじゃないかと思ってね」
「魔法が、禁止…。それだったら、話すら…」
「そうか…。それなら本当にちょっかいをかけに行くだけさ。楽しみだなぁ」
「あの、ちょっと待っててもらえませんか?」

私はそういって自分の部屋に行った。
そして、自分の首にかけている石を半分に分け、同じ様にネックレスにした。
ここアメリカでも島にあった特別な効果のあるものはいくつかある。
そのほとんどは気付かれてないままだからそのまま放置されていたりする。
それを気付いては集めていた箱を引っ掻き回す。
出て来た魔法を遮断する紙切れに魔法をかけて黒い箱にした。
それにネックレスを入れれば完成だ。
そして、フランスさんの元に戻るとそっとその箱を差し出した。

「これを名前に渡してくれませんか?」
「これは?」
「中身はネックレスです。この箱から出せばどんな言語も分かるようになるはずです」
「君、優しいんだね」
「名前にだけですよ」
「え〜?お兄さんにも優しくして欲しいなぁ」
「お断りします」
「そんな所も可愛いよ。そうだ、このバラは君にあげよう」
「良いんですか?」

赤いバラを貰ってちょっとだけ嬉しくなっていると、アメリカさんが帰ってきた。
バックを預かってフランスさんが来ている事を伝えて荷物を置きに行く。
その後、コーヒーを出してそっと自分の部屋に戻った。
そしてもちろん盗聴蜘蛛を向かわせた。

「彼女、なかなか働き者じゃない」
「あぁ、生活がとっても楽になったんだぞ!」
「そっかぁ、お兄さんもそろそろ独りは寂しいかなぁ」
「あげないんだぞ」
「ケチ。…そういえばさっき彼女に名前にプレゼントを渡してくれって頼まれたんだ」
「なんだい?それ」
「魔法のネックレスだってさ。外国の言葉が分かるようになるんだって」
「とってもいいじゃないか!欲しいぞ!」
「これは頼まれたものだから駄目だ」
「確かにそうだね。でも、それを名前に与えるのは反対なんだぞ」
「まさか、今の状態で外交を始めるとは思えないけど?」
「いや、彼は予測できない所がある」
「お前が言うのか?」
「それに彼の性格だと必然的に人が集まるだろ?今派手に動かれると困るんだ」

…派手に動かれると困る。
前にもイギリスと話しているのを聞いていて思ったことだけど、毎度疑問が残る。
まるで何かを計画しているかのような言い様。
もっと、何かもっと的確な情報が足りない。

「あ、イギリスと話してたこと本当だったの?あの島を囲い込んじゃおうっての」
「そうさ。だって今頃珍しいだろ?」
「確かにあんなに純粋に国作ろうとする奴は珍しいかもだけど…」
「そうだろ?見守りたくなるじゃないか」
「もっとやり方があるだろ。今や各国が距離を置くようになっちまってるし」
「それは…、あんなに抵抗する力があるとは思わなくて…」
「それに、アメリカ領だろうとロシア領だろうとあの坊主は関係ないと思うけどね」
「そうかい?少なくとも俺は魔法を禁止にしたりしないぞ」
「そうだろうな」

よく話が読めないけど、アメリカが島の事で色々と考えている事は分かった。
ただ意図が分からない。あの島を手に入れてどうするんだ?
それを言えばロシアもそうだけど、あの島で何をするつもりだろう。

「まぁ、とにかくそれはあげないでくれよ」
「それは俺が決めることさ。前のようにムカつく奴だったら考える」
「彼もロシアの件でイライラしてるはずさ。殴られないように気をつけなよ」

そういって二人の声が玄関に向かう。
もし、名前のもとにネックレスが届かなかったらどうしよう。
居てもたっても居られず、玄関へ向かった。
二人とも驚いた様子でこちらを見ているが気にしない。

「あ、あの。フランスさん」
「どうしたんだい?」
「えっと、今日は綺麗なバラを下さってありがとうございました」
「それを言いに来てくれたのかい?君にあげてよかったよ」
「それと、もし良ければ名前がどんな様子だったか教えてくれると嬉しい、です」
「うん。また来るよ。そのときにでも話してあげる」
「ありがとうございます。必ず、また来てくださいね」

次来た時にネックレスを渡したかどうか調べてやる…!
もし渡してなかったら持ち物に魔法をかけていたずらしてやる。
笑顔で見送りながらそんな事を頭の中で投げかけていた。
さて、渡していなかった時のいたずらを考えよう。
靴紐にマグネットの魔法をかければ転ばせられるし、ズボンに引っ付きの魔法をかければ椅子から立てなくなる。
あぁ、ベルトを石に変える魔法をかけるのも捨てられない。
もういっその事、全部試したいから名前に渡さずに来てくれないかな。














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