VOCALOID

□そんな感じ
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*

「フフッ、なんだか特をした気分ですわ」

ルカは家を出たときとは比べ物にならないくらい上機嫌だった。
キラキラと周りに花でも浮かべてそうだ。
そして、その上機嫌の理由というのが…


___

ルカが近くの書店を訪れた時だった。
真っ先に目に入ったのはずっと楽しみに発売を待っていた少女漫画の最新刊。
しかも本日発売されたばかりの本物の最新刊!
ルカはそのコミックを手に取ると、思わず頬が緩んでしまった。
待ちに待っていた新刊!
やっとあの続きが読めるのね!
小走りにレジへと行くと、ポイントカードのポイントが規定回数まで貯まっていた。
店員からコミック二冊まで無料と言うことを聞き、更にルカの機嫌はよくなった。
少し気になっていたコミック…こちらも少女漫画だが。
もう緩みまくった顔で再度レジへと向かい、二冊を無料でゲットして冒頭に至る。


ルカの足取りは、歩くと言うよりもスキップに近くなってきて、何だか体がとっても軽くなった様な気分だった。
このまま空も飛べそう…何てね!

「うふふっ」

クルッとターンを決めて満足げに正面を向くと、紫の長身が目に入った。
!?もしかして…

「あぁ、巡音さん。何だか上機嫌ですね」
「か、か、神威さんっ…!」

私につられてなのか神威さんの口角も少し上がっているような気がした。
と言うか、今までのを見られていた…?!
先程までも、見知らぬ人に見られてはいたが、知っている人に見られたとなると何だか恥ずかしくなってきた。
しかも、今日越してきたばかりの神威さんに見られたのなら、これで印象付けられてしまっては困る。
背中に冷たい汗が流れたのを感じた。
どうにかして今のことは忘れてもらおう。

「あ、えぇ、と、部屋の片付けは済んだのですか?」
「えぇ、まぁ。元々持ち物は少なかったですし、こちらに来てから家具を買い揃え様と思っていましたのでね」

神威さんは優しく笑った。
心なしかその笑顔に惹き付けられてしまっているような気がする。

「い、今からお出掛けですか?」
「はい、食料を買いに。だけれどもお店がある場所を調べるのを忘れていて…あはは、行き当たりばったりで外に出てきたんですよ」

今度は苦笑い。
とても表情が豊かな人だ。
しかし、今から二人がいる場所はルカが知っている近所のスーパーとは全く反対側だった。
本当に神威さんは迷っているのだろう。
ルカは自分の家の残りの食料を思い浮かべて結構ピンチだった事を思い出す。
そうね、なら…

「神威さん」
「はい?」
「私も一緒に買い物に行きますわ。ついでにお店の場所も覚えてもらってよろしいですかね?」
「!ええ、よろしく頼みます」

神威さんはまた微笑んだ。
よし。これでなんとか話をそらせたわ…
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