VOCALOID

□距離感
1ページ/3ページ

楽譜の読み合わせが始まり、ルカはバッグから愛用している眼鏡を取り出すと軽くレンズを拭いて、耳にかけた。


【距離感】


隣でバッグから何かを取り出すルカを興味ありげに見ていたがくぽは出てきたものが眼鏡と言うと少し驚いた。

「ルカ殿眼鏡をかけておるのか」

ただ思ったことを口にして。
どんな反応が帰ってくるかと思えばスルー。
まあ気にしても仕方がないかと思いがくぽも楽譜に目をおとした。

今回の仕事はがくぽとの新曲デュエット。
よほど気合いの入った曲なのか、細かい文字でびっしりと指示が書かれていた。
いつもはコンタクトなのだが今日に限って片方落としてしまった。
もしもの為にと持ち歩いていた眼鏡が役に立った。
私が眼鏡なのがそんなにも珍しかったのかがくぽはいかにも驚いたと言うような声色だった。
別に眼鏡だっていいじゃない。
がくぽの言葉を無視していた時、不意に視界がぼやけた。

「…ちょっと、がくぽさん?」
「なんだ?」
「返して下さい」

隣にいたがくぽによって眼鏡が取り上げられたおかげでまともに周りが見えない。
この状態で楽譜を見るのは難しい。
ルカが溜め息をつく一方、がくぽは物珍しそうにルカの眼鏡を見ていた。
普段は目に悪影響を与えるようなことをしないがくぽは眼鏡とはほぼ無縁だった。
たまには眼鏡を着用する衣装もあるが勿論度は入っていない。
ルカの眼鏡のレンズを覗き見ると、一瞬クラッと目眩がした。
ルカの視力は相当なもののようだ。
ルカが眼鏡を取り返そうとこちらに手を伸ばすのが見えたためがくぽは立ち上がった。
すかさずルカも立ち上がるが長身のがくぽがさらに手を伸ばしているものだから届く筈もなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ