罪と罰
□このままじゃ
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「キング、一緒にお祭り行こ?」
あの瞬間からオイラの心臓はいつもの何倍も忙しく動き続けていた。
隣に君が歩いてる。団長はいなくて、オイラと君の二人っきりで。
まさかこんな日が来るなんて誰も予想してなかったし、オイラも予想してなかった。
なんと言うかもう、どうしよう、言葉にできないくらい嬉しい。
「人間って、いっつもこんな景色見てるんだね。なんだか素敵!」
「そうかな?オイラは上空から見下ろした町も好きだよ」
あぁ。好きだよなんて、君に向かって形に出来たらどんなに良いだろうに。
「確かにそうだよね!でも、ボクは見下ろした景色ばかりだからたまにはこういうのもいいな」
そう呟いてクルリと一回転回って見せた。
きらびやかに飾った人間なんかよりも、
簡単な服に身を包んだ君の方が断然綺麗に映ってくれる。
飾りなんて必要としない、自然の可愛さがオイラは大好き
「アハハハっ」
「どうしたの?キング」
「いや〜、ディアンヌは大きくても小さくてもディアンヌだなって」
「あたりまえだよ〜、だってボクはボクにかわりないし」
「それもそうだよね」
そう。君は変わらずディアンヌのまま。
変わらないといけないオイラもオイラのまま。
時に身を任せて怠惰を重ね生きるオイラには成長なんてなかった。
そろそろ日が傾いてきて、祭りも一段落しはじめた頃、歩くオイラ達の影は後ろへ後ろへと長く伸ばしながら豚の帽子亭へと向かった。