罪と罰

□このままじゃ
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「昔っからキングは変わらないんだね」


ピタリと足を止めて今度はオイラから目を反らす。

昔から?


「この状況でもまた逃げられちゃうみたい」


顔は見えないのに、背中越しに君は笑っている気がした。

また?
逃げる?

オイラの頭には警報がなり響く。
駄目だ。このままじゃ。
お願い次の言葉を言わないで。



「ねぇ、キングはさ…






____ハーレクインはボクの事、









好き?」



心臓が張り裂けそうだ。
喉が渇いてしまって声も出せない。
月が雲に隠れて闇がいっそう大きくなった気がする。

不意に体に優しい温もりが、優しい締め付けが伝わった。


このままじゃ


「嫌だよ…このままじゃ。ボクが嫌だよ」


君の涙がオイラの服を濃く染めた。
なぜかオイラの視界が歪みはじめる。


「ゴメン…ゴメン…」


今まで積み上げていた全てが。
一瞬で崩れてしまったような感覚。
君の涙に全てを流されてしまった。
理性とかそんなものは必要ない。

だってこのままじゃ…


「オイラだってこのままじゃ嫌だよ。君を、ディアンヌを、離したくないよ。」

「………」


涙が、オイラから君の頬を伝った。


「君の事が好きだから。大好きだから。独り占めしたい。もう、君から逃げるなんて絶対したくない」


君を抱きしめる手に力が入る。


「よかった。ハーレクインから聞けて」


彼女の笑顔を照らすように月にかかっていた雲が晴れた。

やっぱり、君は綺麗だ。


そっと顔を寄せるのはどちらからと言うわけではなかった。
初めての感覚は少ししょっぱくて、でも大好きな君その物。

ただ、このままでいたかった。








-END-
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