ごーすとはんと

□みみ
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⚠︎特殊設定














『まっ……むっ……とおと……』

「………………」

ーパシャパシャパシャ

「あは、こんなのは?」

『ほん………はぁ………すき推しが……すき』

ーパシャパシャパシャパシャパシャパシャ

「……………………」

「あはははは」

「「「「「「………………」」」」」」

何が起きているのかというと、私とナル、ジーンに仲良く猫耳が生えてしまいました。
同じ部屋で寝ている私たち(ジーンは別のベット)だけの現象だったのかリンさんには生えていなかった。
朝から双子の黒耳、黒尻尾を見てしまい(ちなみに私は白)鼻血と興奮が治らないのだ!!
事務所を閉めるわけにもいかずとりあえず帽子をかぶっていざ行かん。

ずっと帽子をかぶっている私たちに麻衣ちゃんたちが触れないはずもなく無理やり取られてしまい(ジーンが取られた)バレたので朝からの出来事を説明し、悪い顔(名案)をしたジーンがナルの隣に並んで尻尾を絡めたり毛繕いをしている姿を見て私の鼻血が火を吹いている。

『はぁはぁ、双子最高だなおい!!』

「鼻息と鼻血を出しながら言ってるからすごい光景」

「音無さんにこんな一面があったなんて意外だなぁ」

「秋はただのおたく?らしいですわよ」

「ふじょしとも言ってたよ。聞いてもよくわかんなかったけど」

『は〜ん♡ジーン最高じゃん発想が♡』

「尻尾も馬鹿正直だな。興奮が隠しきれてねぇのかさっきから高速で動いてる」

「リンさん、これっていつ治りそうなの?」

「さぁ…私共では専門外なので」

「霊的なものではないのは確かですわ。何も感じませんもの」

「ジーンも同じことを言っていました。彼はあぁなので気にしませんし、ナルも研究の邪魔にならないなら、とさして気にはしていません」

「でもさっきから明らかに不機嫌じゃない?」

「朝からずっと撮影会とベタベタが止まらず不機嫌なんですよ」

「助けてあげないんですか?」

「私は関わりたくないので」

「リンさん……」

「えらい三人とも似合ぉてはりますね。可愛らしいです」

「確かに……」

「言われてみれば……」

「「『……??』」」

夢中で写真を撮っていると途端にシーンと静かになったのを不思議に思い後ろを振り向く。ナルとジーンも同じようにコテンと首を横に傾げた。

「かわいいですわ!!」

「真砂子!?」

「確かに可愛いよなぁ……秋、お手」

『?』

「(かわいいな。梅吉の嫁に…)上手にできたじゃねぇか〜えらいえらい」

『ンッ、ぁ…うぅ〜とけるぅ』

素直に右手をぼーさんの掌の上に乗せると顎の下を撫でてきた。なんだこれは…とろけるぐらい気持ちいい。猫はいつもこんな気持ちだったのか耳はぺたりと後ろに沿って目を細めながらぼーさんを見つめる。

「……「秋!私も撫でていいですかしら?」

『?いいよー』

「あ、ずるい!私も」

口を引くつかせて少し顔の赤いぼーさんを押し退けて真砂子が私の頭を撫でてきた。それを見て麻衣ちゃんも参加してきて顎の下を撫でられる。

『ふぇ、だめだぁとろけるぅ』

「可愛いですわ秋」

「よーしよし」

「は、原はん……」

「目がマジね……ちょっとアンタが赤くなってどうすんのよ!」

「いやぁあまりの可愛さに……」

「滝川さん、あちらをご覧ください」

「あ?………うげっ!?」

「渋谷さんがバシバシとこちらを睨みつけながら尻尾を叩きつけられてるんですよ♡」

「よ♡、じゃねーよ!どーすんのよ俺まだ死にたくない!」

「はははは」

突然バンっと大きな音が鳴り響いて麻衣ちゃんと真砂子の撫でる手がぴたりと止まった。

「………………今日はお引き取り願えませんか?」

音の正体は分厚い本を机に叩きつけた音だった。

『わぁいい笑顔ぉ〜すき』

あは、と私は呑気に写真に収めている。ナルは横にいるジーンをいい笑顔で見つめると顔を青くして、すすすっとナルの隣から離れていきぼーさんを盾に後ろへと隠れる。

「なんで俺なんだよ!!」

「ぼーさんなら大丈夫でしょ?」

「男の上目遣いなんかいらねぇよ!」

「ひどい、法生…僕という恋人がいるのに耳の生えた男に乗り換えるだなんて」

「勘弁してくれ〜」

「……もう一度言う。話している暇があるならさっさと出ていってくれませんか?」

「「「「「……………はい」」」」」

その言葉にみんながそそくさと帰宅準備をして帰っていく。真砂子は麻衣ちゃんに引きずられている様子に笑顔で手を振り、尻尾をゆらゆらと動かしながら笑顔で見送る。

「秋!いやですわ!まだ秋のことを抱きしめてませんもの!」

「何いってんの!そんなことする前にナルの怒りがここを破壊しちゃうよ!」

「いやですわ!離しなさい麻衣!」

「まぁほら帰るよぉ〜」

「秋ーーーーー!」

『へへ、またね〜』

「尻尾!秋の尻尾が!可愛いですわぁぁ〜……」

扉の外へと消えていった真砂子の叫び声がしばらく聞こえてきたのは言うまでもないね。
ちなみにジーンはぼーさんと安原氏に抱えられながら出ていったよ。二人とも力持ちだなぁ…

先ほどの騒がしさとは違い静かさに包まれ少し寂しいと思った。まぁ写真はたくさん撮れたし?それを現像して私のマイアルバムに追加して時折ニヤニヤするからいいけど。

「…………」

「………私も少し外の空気を吸ってきます」

『え!?リンさんもぉ〜?』

「最近駅前に新しくできた洋菓子屋があるらしいですよ」

『いってらっしゃい!お土産よろしくね!』

「それでは行ってきます」

『いってらっしゃ〜い』

足音がしなくなるまで耳をピーんと立てる。完全に物音がしなくなったのを気にナルの隣に腰掛けてそのまま横になり膝上に頭を乗せた。

『暇になっちゃった〜』

「静かでいい」

『ナルはそればっかじゃーん』

静かに読んでいた本をパタリと閉じて膝上の私を見下ろしてくる。

「静かじゃなければいいのか?」

『だって暇なんだもん…ナルは構ってくれそうにないし』

頬を膨らませながら抗議の声を上げると右手で膨らみを潰されてしまった。

「…ほぉ」

どういう心境なのか頭を撫でられる。構ってやるという意なのか単なる気まぐれ(?)なのか、その手はだんだん耳のほうへと位置をずらされ、指先で摘まれるように時折摘みながら撫でたりする。

『なんか、や…だむずむず、、する』

「へぇ」

さも興味なさそうな声を出して反対の手で喉を撫でられた。

『ぁ、ゃ…それやだぁとける』

「人間が溶けるとどうなるのか見てみたいものだな」

『ふぁッ…ン、、にゃる怒ってるなら、あやまる、からッア』

「怒ってると言った覚えはないが?」

『んンっ、じゃ、なんで?ヒィッ!?』

横目でナルを見ると楽しそうに目を細めながら私を見つめている。綺麗な黒色の尾はゆらゆらと揺れていて楽しいのが見て取れる。
尻尾の付け根あたりを優しく円を描くように撫でられてそこから電気が走ったような感覚がした。

『にゃ!なる、それだめ、やめ…』

「どうした?」

『びびって、ひぁッ!?あァ、ンんッ』

「……(身体中がビクビクしてる…」

『ンン〜〜〜〜ッ(怒)!!!!』

「!?」

涙目で息も絶えだえにナルの尻尾を掴んだ。すると尻尾と耳をピーんとまっすぐに伸ばして動きが止まったので、動きが静かなうちに素早く離れてソファの端へ移動し自分を抱きしめるような体制を取った。
ピーんと糸を張ったような尻尾と耳は緊張が解けたように柔らかくなり、先端をふよふよと動かしながら私を見つめる。
まだ私に何かするのか!?えっち!

『(しゃーーーっ)』

「…(子猫の威嚇)」

尻尾を膨らませて威嚇をするけどナルには効かないのかジリジリと距離を取られてしまい、伸びてくる腕にすっぽりと収められてしまった。

「怖がらせたのは謝る。が、秋が悪い」

『今の流れで私が悪かったと思う箇所を十文字以内で述べよ』

「ぼーさんに触られてた」

『きっかり漢字変換込みで十文字!勝手に触ってきたんじゃん!私悪くないし!』

「ダメだ」

『ダメダメばっか』

「……撫でられたいなら僕のところへ来い。それで丸く収まる」

たしかに……私も構ってもらえるし、よくわかんないけどナルも機嫌損ねないし、むしろ一石二鳥いや三鳥ぐらいにはなるのでは?

『ん〜……じゃあそうする』

「ふ、それでいい」

あ、優しい顔してる。ナルが本気で笑った時の顔だ。えへ、と笑いながら首筋に擦り寄り体重をかけていくとあっけなく後ろへ倒れてしまう。

「こっちの方がいい」

くるっと半回転させられて狭いソファで一緒に横になる。思っても見なかった行動に目をぱちぱちとさせ、顔をだらしなく緩めて首に腕を回した。落ちないように私の背中に腕を回して目を閉じる。

『ねる?』

「あぁ」

『ねむい?』

「ねむい」

『とっても?』

「とっても」

オウム返しが可愛い……萌えたすき
実はと言うと私もすごく眠い。そういや猫は一日に寝る時間が十時間〜十六時間と聞いたことがある。そのせいなのかな?私も眠い。
狭いソファで窮屈だったけど逆にそれがいいと思うのが猫だからかもしれない。今の状況も私は困るよりも嬉しさが勝って、心地よく感じてしまうあたり、猫も悪くないなぁなんて考えた。





***




あーあ、こうなってるだろうなって思ってたよ僕はね。

「幸せそうな顔しちゃってさ〜」

机に置かれている数時間前まで大活躍していた物を手に取り二人を収める。
切り取られた写真を見ると、思わず穏やかな時間を僕が閉じ込めてしまったんじゃないかと錯覚してしまいそうだった。それほどまでにこの二人の表情は柔らかい。未だに違和感のある耳と尻尾は健在だけど。

「んーまぁでも楽しそうだからこのままでもいいかなぁ〜」

お互いに巻きついている黒と白の尻尾を見て僕は楽しむだけだから。

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