:短編:
□大切な写真
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季節は″大晦日″。
大晦日といえば、家族と共に年越し蕎麦を食べ、新年が明ける瞬間を迎える日だ。
そして……大掃除をし、新しい気持ちと環境で新年を迎えることもある。
昼を少し過ぎた頃、かぶき町のとあるスナックの2階も例外では無かった。
「おおー!こんな所にあったアルカー!ずーっと探してたんダヨー!」
「神楽ちゃん、何か見つかったの?」
「おう!これネ!」
「ギャァァァァ!!何それ!?臭い!!臭いィィ!!」
「1年前の酢豚アル。友達から貰ったネ」
「何で酢豚!?いやそれよりも何でそんなに変色してんの!?何でタッパーまで変色してんのォォォォ!?」
相も変わらず騒がしい万事屋は、和気藹々、とは表現出来ないかもしれないが、各々が大掃除に励んでいた。
神楽の発見した1年前の酢豚の臭いに顔を歪め、鼻を摘まみながら「捨てて」と抗議する新八。
しかし、何故か浮き浮きとした様子の神楽は聞く耳を持っていなかった。
「銀ちゃんに見せてこよーっと」
そう言いながら、彼女は今いる客間兼居間から隣の和室へ飛び込んでいった。
新八は驚いて引き止めようとしたが、時既に遅し。
「ギャァァァァァァァァ!!」
「あ、手が滑って銀ちゃんの口にシュートしたアル」
聞き慣れた男の悲鳴と、淡々と喋る神楽の声が新八の鼓膜を震わせた。