:短編:
□彼女は天人
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……──太陽は昇り、眩しい光の下で活発とするかぶき町。
人で賑わう通りを、不思議な着物の着方をした銀髪の青年が歩いていた。
名を坂田 銀時。──攘夷の経験を持つものの、今は万事屋を営むちゃらんぽらんの青年だ。
銀時は歩きながら、隣を歩く男をチラリと見遣る。
長い黒髪に、中性的な顔立ち。──桂 小太郎である。
「……つーか何でお前が隣にいんの?俺今から玉打ちにいくんだけど。急に出会って然り気無く隣を歩き始めるとか」
「いいではないか。俺は今真撰組の追跡を躱しているんだ。少しは匿え」
「どこが匿ってんのコレ?隠れてないだろコレ」
口元を引き攣らせ、冷静に銀時はツッコミを入れる。だが、桂は見事に無視を決め込み、辺りを見渡し続ける。
「てかよー。真撰組は俺とも繋がりがあるんだから余計バレるっての!」
「大丈夫だ。俺達は空気になれる!そう、大気に漂うCO2のように!」
「二酸化炭素ってか!?せめて酸素にしてくれ!」
結局はこの2人。騒がしさが増した彼らを、通りすがりに怪訝な目を向ける人々が出始めた。
──これ、余計に目立ってね?
辺りの目線には敏感な銀時は、自分達に集まる目を感じ取っていた。
「……おいヅラ。少し黙ろうか。真撰組にバレたくないならその頭の物体口に突っ込ませて黙らせんぞ」
「ヅラじゃない、地毛だ。そして桂だ。……まぁ、確かに少し騒ぎすぎたな。場所を変えるか」
銀時程とは言えないが、幾つもの戦場をくぐり抜けてきた桂も、流石に状況を把握したらしい。
少し渋い顔をして銀時の腕を掴み、どこかへ引っ張り歩いていった。
「引っ張んなァァァァ!俺の予定聞いてた!?パチンコ行くの!!今日の占い1位だったから絶対に今日はイケるんだよぉ!!」
銀時の叫びも虚しく、彼らの姿は路地裏に消えていった。