:短編:
□嫌い者同士
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……太陽が昇っている間、人々が賑わう町は、今は眠りについている。
日付が変わり一刻が過ぎた頃、町の静けさとは反対に、騒がしく人が行き交っている場所があった。
「早くこの患者を緊急手術室へ!!危険な状態よ!!」
「輸血の準備!!血を流しすぎている!!」
……ここは、病院。
医師と看護師が慌ただしく廊下を駆け回り、台に乗せられた人の様子を見て険しい表情を浮かべる。
その台を囲むのは、黒い隊服を着た数人の男達。
皆一様に泣きそうに顔を歪め、必死に呼び掛ける。
「副長ォォ!!」
「副長、目を覚ましてください!!」
「死ぬなんて、絶対に許しませんよ!!」
悲痛な声は、台に横たわる青年──土方 十四郎には届かない。
固く瞳を閉じ、苦しげな呼吸が漏れるだけ。
時折聞こえる呻き声は、″鬼の副長″と恐れられる彼からは予想も出来ない程弱々しいものだった。
土方はガラガラと緊急手術室へ運ばれていき、真撰組も共についていく。
そんな中、たった1人。
彼らの様子を、呆然と立ちすくみながら見つめる少年がいた。
「……あ、ぁ…………」
少年──沖田 総悟。
血の気が引いたような顔色と、掠れた音しか出ない口。
──どうして、こうなった?
──どうして、こうなった?
──……どうしてなんて、解ってるだろ。
──土方さんは……。
──……俺を庇って、こうなった。