:短編:
□誰だって風邪を引く
1ページ/4ページ
「風邪引いたネ……」
万事屋のとある朝、起きてきた神楽の一声は完全に鼻声だった。
「か、風邪?」
「アホか、こんな年中元気丸出し娘が風邪なんか引くわきゃねーだろ」
朝食の椀を置いていた新八が、訝しげな表情で反芻する。
しかし心優しい性格があってか、どこか心配げな声色だった。
彼とは反対に、銀時はソファーにどっしり腰掛けながら鼻をほじくり、神楽の方を一切見ずに呆れた声で否定した。
「これは絶対風邪アルヨ。頭がゴンゴンするし、喉もズキズキするネ。は、鼻もムズムズ……ぶぇーーーーっくし!!」
神楽は頭を抑え、鼻を啜りながら自身の症状を述べていく。
聞いていた新八が「それもう絶対に風邪だね」と、口を開こうとした途端のことだった。
……神楽の盛大なくしゃみが、並べられていた食卓に降りかかった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!汚ねぇぇ!!」
「神楽ちゃんもう布団で寝てて!」
悲鳴を上げ、鼻水だらけのご飯や味噌汁を見つめる銀時。
新八は慌ただしく、神楽の寝室、もとい押し入れにある布団を引っ張りだし、銀時が寝起きする隣の部屋に敷く。
そして神楽を連れていき、ゆっくりと寝かせた。
ここまでの流れが順調過ぎて、銀時の顔が妙に引き攣る。
「ぱっつぁん速ぇ……」
「いい?神楽ちゃん。風邪だからって甘くみないようにね。安静にしてるんだよ」
「うぅ……分かったネ」
布団を深く被った神楽を見届けると、襖を閉め、居間に戻った新八。
「あぁ〜、朝御飯食べられなくなりましたね……」
悲惨な様子になってしまったテーブルを見ながら呟く彼に、銀時はうんざりだと言いたげに両手を後頭部で組み、ため息をついた。