:短編:

□誰だって風邪を引く
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「風邪引いたネ……」

 万事屋のとある朝、起きてきた神楽の一声は完全に鼻声だった。

「か、風邪?」

「アホか、こんな年中元気丸出し娘が風邪なんか引くわきゃねーだろ」

 朝食の椀を置いていた新八が、訝しげな表情で反芻する。

 しかし心優しい性格があってか、どこか心配げな声色だった。

 彼とは反対に、銀時はソファーにどっしり腰掛けながら鼻をほじくり、神楽の方を一切見ずに呆れた声で否定した。

「これは絶対風邪アルヨ。頭がゴンゴンするし、喉もズキズキするネ。は、鼻もムズムズ……ぶぇーーーーっくし!!」

 神楽は頭を抑え、鼻を啜りながら自身の症状を述べていく。

 聞いていた新八が「それもう絶対に風邪だね」と、口を開こうとした途端のことだった。

 ……神楽の盛大なくしゃみが、並べられていた食卓に降りかかった。

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!汚ねぇぇ!!」

「神楽ちゃんもう布団で寝てて!」

 悲鳴を上げ、鼻水だらけのご飯や味噌汁を見つめる銀時。

 新八は慌ただしく、神楽の寝室、もとい押し入れにある布団を引っ張りだし、銀時が寝起きする隣の部屋に敷く。

 そして神楽を連れていき、ゆっくりと寝かせた。

 ここまでの流れが順調過ぎて、銀時の顔が妙に引き攣る。

「ぱっつぁん速ぇ……」

「いい?神楽ちゃん。風邪だからって甘くみないようにね。安静にしてるんだよ」

「うぅ……分かったネ」

 布団を深く被った神楽を見届けると、襖を閉め、居間に戻った新八。

「あぁ〜、朝御飯食べられなくなりましたね……」

 悲惨な様子になってしまったテーブルを見ながら呟く彼に、銀時はうんざりだと言いたげに両手を後頭部で組み、ため息をついた。
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