:短編:
□大切な写真
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騒がしい声と共に、激しい物音が隣の和室から聞こえてきたが、何よりも新八の頭には、先程神楽が口にした言葉が反芻していた。
″口の中にシュート″。
……即ち、あの酢豚が口に入ったという結論に至った。
「って!大丈夫ですか銀さん!?」
──それはマズイ。マズイよそれ!!いや味じゃなくて色々と!!
新八は急いで隣の和室へ駆け込み、犠牲者の安否を確認する為に光景を視界に入れる。
第1に見えたのは、零れた残りの酢豚をかき集める神楽の姿。
そして──膝をつき口元を抑え、身体をプルプルと震わせながら青ざめた表情をする銀髪の男……坂田銀時。
「銀さん!大丈夫ですか!?飲み込んじゃ駄目ですよそれ!」
「…………吐いて、くる……」
必死に紡いだ言葉なのか、掠れた声でそれだけ言うと、のろのろと立ち上がり厠の方へ歩いていった。
「銀ちゃん、ヒドイヨ……。折角貰ったのに……」
「いや神楽ちゃんの方が酷いから。銀さんに謝ったの?」
「イヤアル!謝らないヨ!酢豚食べた恨みは忘れないネ!」
「謝れェェェェ!!つーかその酢豚捨てろよォォォォ!!」
「うっさい駄眼鏡!!大切な酢豚アルヨ!!」
「駄眼鏡言うな!!眼鏡は立派なチャームポイントなの!!」
何故か謝ろうとしない神楽と言い争いになった新八は、手際よく酢豚をビニール袋に入れ、ごみ箱に投げ入れた。
「ああっ!酢豚が!」
神楽の悲鳴じみた叫びが響くが、それもまたノリだろう。
ハァ、と溜め息が零れた新八の視界に、ある物が写り込んだ。