:短編:
□彼女は天人
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「…………で?俺を連れてきた理由は?」
銀時と桂は今、桂達穏健派の攘夷志士が潜む隠れ家にいた。
住宅地に並ぶ家のひとつで、多少ボロはあるものの、生活には困らない程度には広い。
数ある部屋の内、今は誰もいない和室の中心に、銀時と桂は向かい合って座蒲団の上に座っており、静かな怒りが込められた銀時の声が桂に向けられた。
「まあそう怒るでない。俺は貴様のむだ使いを止めてやったではないか」
「なーにがむだ使いだ!!パチンコは夢と希望が詰まった宝箱なんだよ!!」
「絶望の方が多く詰まっているだろ」
「……うっせー」
淡々と言葉を返され、更に銀時にとって図星であった為、ぷいと顔を逸らす。
その様子が可愛かったのか桂は小さく微笑んだが、直ぐに表情は戻り、静かに話し始めた。
「……銀時」
「んだよ」
視線をこちらには合わせないまま返事を返した銀時だったが、桂は気にしない。
「銀時は……。今、幸せか?」
「……急に何だ?頭でも打ったか?」
「打ってなどいないわ。……質問を変えよう。──今でも天人が嫌いか?」
目を見開く銀時。真剣な表情の桂。
彼らの間に妙な静寂が訪れる。
銀時は無言のまま桂を見つめた。彼の瞳を見つめるが、ふざけて聞いているようには見えなかった。
やがて銀時が深い溜め息をつくと、やれやれといった風に口を開いた。