:短編:

□誰だって風邪を引く
2ページ/4ページ

「おい新八。コンビニでちょっくらメシ買いに行ってこいや」

「いやいや何で僕が!?銀さんが行けばいいじゃないですか!!本来今日の朝食の担当は銀さんでしょ!!なのに寝坊して結局僕が作ったんでしょうが!!」

 血相を変えてギャーギャー騒ぐ新八の声が予想以上に五月蝿かったのか、人差し指を耳の穴に突っ込んで塞ぐ。

「へーへーすいやせんでした。でも俺は家から出たくねぇんだよ」

「我が儘な王子かアンタは!!」

 悪びれもなく淡々と言い放つ銀時に思わず突っ込んだ新八は、荒れた息を整えた後に呆れた表情を浮かべる。

 急に表情を変えた眼鏡の少年に、銀時が訝しげに新八を見やる。

「……分かりました。僕が代わりに朝御飯買ってきますよ。ついでに神楽ちゃんの風邪薬と冷えピタも。昨日依頼で報酬貰ってて助かりましたよ本当。……でも銀さん、代わりに神楽ちゃんの看病、よろしく頼みますよ」

 この時、銀時の思考が一瞬制止した。

 ──は?看病?誰が?俺?神楽に?

「じゃあ行ってきまーす」

 頭の中でぐるぐると思考が回り硬直する上司を放置し、新八は買い物へと出掛けていった。

 残ったのは唖然とする銀時と、隣の部屋で寝る神楽のみ。

「……チッ、やりゃあいいんだろやりゃあ!」

 半ばやけくそで頭を掻き、文句を口から漏らしながらも立ち上がる。

 何だかんだで銀時も寝坊したという事実には反省しており、神楽が心配なのが見てとれる。

 ただ、それを素直に出さないのが彼だった。

 銀時が寝室の襖を開けると、掛け布団が上下しているのが見え、寝ているのだと直ぐに分かった。

 起こさないようにそっと布団に近付いて、顔を覗き込む。

 ……見えた神楽の顔は、ほんのりと赤かった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ