Long(wrtr)
□玉狛支部
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「なぁ柚〜頼むよ〜」
今現在、玉狛支部に行く途中だった岩城の足元にはある男が縋りついている
あと数分も歩けば着くという所で思わぬ足止めを食らった岩城は溜め息を吐く
「迅……いい加減にして。自分でやらなきゃ力にならないよ?」
その男の名は迅悠一。玉狛支部所属のS級隊員だ
「いいや、お前は絶対最後には課題を貸してくれる。俺のサイドエフェクトがそう言って「無い」……」
岩城と迅は同年代の為大学の講義で一緒になることもある。それ故に岩城は迅にこうして縋られることも多いのだ
「ねぇ迅……私早く玉狛に行きたいんだけど」
「それは出来ないな。ここに居るその玉狛支部の隊員が許可を出していない。許可して欲しければ課題を見せることだな」
「あっじゃあいいです」
「えっ」
「……嘘嘘。迅の予知通りってのも癪だけど見せてあげるから離れて」
驚いた顔の迅を心底面白いと言う様に肩を震わせて笑う岩城を見てようやく迅も離れる
「じゃあとりあえず一緒に玉狛に行こうか」
「えっ」
「えっ玉狛行くんじゃないのか」
エスコートする様に岩城に手を差し出す迅に小さく声を上げた岩城に迅も間抜けな声を出す
「いや冗談だって、迅からかうの楽しい……って思ったけど迅には全部見えてるのか」
「まぁな」
玉狛支部へと足を進めながら談笑する
すると、岩城がふと足を止めて呟いた
「……ねぇ迅、私の未来はどうなってる?」
「?……聞いても良いもんじゃないぞ。全ての未来が良い未来とは限らない」
「じゃあせめて。……生きているかだけでも。遠征後の、私が」
空を仰いでうわ言の様に呟く岩城を、迅は見つめる
「……生きてるよ。最悪のことが起きなければだけどね」
「そこは言い切って欲しいんだけど」
苦笑いしつつ、目線を下にして岩城は再び歩き始める
一方、迅は少し立ち止まって小さな背中をじっと見る
「遠征、不安なのか?」
「少し、ね。近界民にお世辞でも良い思い出は無い。まぁみんなそうだろうけど、それに」
何が起こるか分からないじゃない?
そう彼女は迅の方に振り向いて問う
「予知が覆るのは良くあることだしな」
「縁起悪い事言わないで。もっと不安になる」
岩城は眉を下げてそう呟くと、困ったように笑う
「___言えないよなぁ」
生きてたら俺と戦う事になる、なんて
迅はその言葉を飲み込み、小走りで岩城の横に並んだ
※この小説は迅さんが大学通っているのを前提としています