恋敵と私と彼

□私達の関係性
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私の名前はスノウ、花も恥じらう15才。恋だってそりゃもういっちょ前にしている。

私の大大だ〜い好きな人ディオン。彼のどこが良いって、あの光に当たると青銀に変化するサラサラの肩に掛かる位までの黒髪に、鼻筋の通った高過ぎず低過ぎずの綺麗な線を描いた鼻、そして深く輝く紫の瞳に見つめられたらもう!

そして極めつけは元気で無邪気なあの笑顔。
誰にでも差別することなく周囲に撒き散らされるあの笑顔は、私の母性部分をいやがおうにもくすぐる。

それに身長も年頃の男の子達と比べると175とちょっと高くて、まだ大人ってわけではないんだけれど男性っていうのをたまに感じちゃったり。

でもそんなことを思うのは私だけじゃなくて、村のほとんどの女の子はディオンの隣を常に狙っている。ディオンは誰とでも仲良くなれるから、村の皆が通う学校でも大人気で、いつも周りにはたっくさんの友達に囲まれているの。

因みに私は自慢じゃないが、ディオンとはいわゆる幼なじみという関係性を持っている。家が隣同士で小さい頃から家族ぐるみのお付き合い。

そして片思い歴は十数年。
好意をアピールしてアピールしまくっているのに、あまり上手く伝わらない。
ちょっと前にディオンの腕に自分の腕をからめて思いきって告白してみた時があったけど、

『ディオン大好きっ』
『そんなにくっつくなって(笑) 俺もスノウのこと好きだぜ』

と一瞬勘違いしそうなことを言われた。私はそこまで馬鹿ではないし、これがそういう意味ではないことくらいの区別はつく。

でもそんなことではめげないのよ。
今日こそは…絶対に!今日こ「ちょっとあんたいつまで私達を待たせるつもり!?支度終わったんならさっさと出てきなさい!」

と、決意を新たに旅支度をしている途中、家の外から突然聞こえてきたのは少しハスキーな女の声。その声の正体を知っているスノウは、嫌々頭に浮かんだ女の顔に表情を険しくしながら声をあげた。

「フィーラうるさい‼あとちょっとだからっ」
「まぁ別に行けないならディオンとそのまま二人で旅出るからいいけどぉ〜?ねっ、そうしましょうよディオン(チュッ)」

…なっ‼‼

ドタドタドタ…バンッ

「フィーラぁ!抜け駆けは許さないからねって言ったでしょ‼」
「やっと出てきたわね小娘」

家の扉を開けた先にいたのは、出てきたスノウを鼻で笑いながらディオンに抱き着く美女。
金色の胸辺りまでのびた少しウェーブがかっている髪の毛。鼻筋は通っており、長い睫毛たちが縁取る瞳の色は翠青色をしていて、肌は嫉妬するほどに白い美形。
背はモデルさんのように高くスラッとしており、180ぐらいになったと最近言っていた。

名前はフィルレイト。
一応彼女も幼なじみという部類に入る。
そして私の恋敵『ライバル』でもある。もうずっと、いつからかはわからない位にディオンの隣を争ってきたが、正直あまり勝てた試しがない。

小さい頃村の年少組のお遊戯会でディオンがやる王子様の相手のお姫様役を誰に決めるか争った時も、

『困ったわね〜。お姫様役やりたい子いっぱいいるから先生が勝手に選ぶわけにはいかないし、ジャンケンで決めましょうね』

『『『『せーの!じゃ〜んけーんー…』』』』




―――――――…

『ぽいっ…ぽいっ…ぽいっ』

ゼェッ ハァ

残ったのは二人。

『フィーラッいい加減っ違うの出しなさいよっ』
『あんたこそ同じの出さないでよ!終らないじゃないっ』

『あらまぁ困ったわねぇ…。う〜ん…じゃあアレで決めましょう?腕相撲!』

私達の戦いはあれからまだ続いていたのだけれど、いつまでも決着がつかない勝負に見かねた先生が、これで終わりとばかりに腕相撲を提案してきた。

『えっ、でも先生フィーラは』
『先生賛成!じゃあ始めましょスノウ』

眉間にシワを寄せたスノウが嫌だと言おうとしているのを完全に無視して、フィルレイトが先生の提案に乗っかった。先生も早く決めたいのか、直ぐ二人の目の前に小さな木の机を置いて戦わせようとしている。

だから渋々勝負をしたが、年少組の中で最もと言っていいほど握力皆無の私。
結果は当然

『きゃー!やったわぁ‼ディオンよろしくね』
『おう。フィーラ頑張ろうぜ』

完敗だった。
そして私の配役は『木』。二人のラブシーンをひたすら茶色い板越しから見ていた。屈辱以外のなにものでもない。

なによなによ!仕方ないじゃないっ。負けて当然だわ‼
だってフィーラは―――…


スノウが昔を思い出していると、フィルレイトが家のドアを明けたままボーっとしている彼女に向かって、妙な物を見る目付きで話掛ける。

「ちょっといつまでアホズラさげてるのよ。本気で置いていくわよ」
「アホってなによ!」
「え、あんた意味がわからないの?」
「わかるわよ!〜ぅっていうか、いつまでもディオンにくっついてないでーっ!」

自分の両手を二人の僅かな隙間に入れ込み、思いっきり腕を左右に広げてベリッと二人の間を裂く。近づかせてなるものか。

「やぁねぇ…ちょっとは女の子らしく振る舞えたりしないのかしら野蛮人」

アホな子を見る目でスノウを見つめるフィーラ。全く失礼な視線だわ。

「フィーラよりも背は低いし女の子らしいもんっ」

頬をぷくっと膨らませ睨み返す。

「そんな仕草したって全っ然可愛くないわよ。もうやらないことね。ねぇディオン?」
「そんなことないけどな。可愛いじゃんスノウ」

自分の意見を否定しスノウを褒めるディオンにムッとし、怪訝な顔をするフィルレイト。そんな彼女の事を気に止める事なくディオンの言葉に顔を真っ赤にするスノウ。

「ほっ本当?か、可愛いかった?」

なんだか顔全体が熱くなってきた。今ならおばあちゃん特製のイチゴジャムと一緒に鍋で煮込まれてもいい気がする。

「調子乗ってんじゃないわよアホ娘!ディオンはね優しいからそう言ってあげてるのよ」
「ふんっ。なによ自分は可愛いって言われてないからって」
「そんなことないわよ、ねぇディオン私可愛いでしょ?」

再びディオンの腕にすり寄る、目の前の恋敵。

「もう!だから離れて――」

そんな行為を彼を好きなスノウが当然許す筈もなく、直ぐに二人の間に割り込んで行く。これはもうスノウの条件反射で、他の女の子がディオンにくっ付いている時は悔しいながらも大人しくしているのだが、昔からのいがみ合いのせいか、彼女がディオンに近づくと居ても立ってもいられない。
だからいつもこの二人は、ディオンが絡むと最終的に喧嘩終わりとなっている。

「邪魔しないであんたは後ろ歩きなさいよ」
「そんなの嫌!もう噛みついてやるんだからっ」
「やめなさいって!」

そして始まるキャットファイト。

「はぁ。ったく喧嘩やめろよな。もう俺先に村長とこ行ってるから」

二人の言い争いに慣れているディオンだが今日は急ぎの用事がある。それは目の前で喧嘩をしている二人にも言える事なのだが、これでは埒があかないので取り合えず先に行くことにした。

言うのが早いか、もう遠くにみえる。

「あーっ!スノウのせいでディオンが先に行っちゃったじゃない!」

そんな彼の背中を見ながらフィルレイトは目の前のスノウを睨む。しかし彼女の睨みにどこ吹く風のスノウは負けじと言い返す。

「フィーラがディオンにベタベタするのが悪いんじゃないの」
「自分が出来ないからって八つ当たりやめてよね」
「私だってやるときはっ」
「はいはい」

くぅっ、ム・カ・ツ・ク!余裕ぶっこいちゃってもうっ。とフィルレイトに軽くあしらわれている状況に、苛々して眉間に段々シワが寄っていく。きっと今の私は最高に可愛くない顔だ。

「眉間にシワやめなさいよ。跡がついてあっという間にお婆さんよ」

と言ってスノウの眉間を伸ばすフィルレイト。こういう仕草をする時、なんだかんだ言っても二人はディオンが絡まない時以外は、普通に友達兼幼馴染みとして仲はまぁ良いのだと感じる。

「まだまだ大丈夫だもん。ピチピチだし、なるとしても将来はローネおばあちゃんみたいに可愛いおばあちゃんになるもん」

ローネおばあちゃんは私の母方のおばあちゃん。小っちゃくて目がクリっとしていて、笑顔がとっても素敵で可愛い私の自慢のおばあちゃんなのだ。
おばあちゃんは今王都という国の中心地で薬屋?なのかな。人を助ける仕事をしてるらしく年に何回かしか会えてはいない。

「あんたじゃどう頑張ってもローネ老にはなれないわよ。諦めなさい」
「なによ。フィーラよりは可能性があるわ」

だって













「オカマに負けるはずないもの」




そう






フィーラは男の子なのです。

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