恋敵と私と彼

□女の勘って…
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さて、説明という説明にもあまりなっていない話を村長から聞き終えた私達。
とにかく目指す場所はわかった。王都のローネおばあちゃんの元まで3ヶ月以内に無事にたどり着くこと。よっし!そうと決まったらいざ出発よ!

――――と行きたいところだが。

長旅になるとはわかっていたものの、昨日の今日で支度が完璧にできている筈がなくて、説明もついさっきまともに受けた私達は急いで帰り準備に取り掛かる。

えーっと
ワンピースを1枚に下着は2枚。
靴はお気に入りの雨に濡れても大丈夫なブーツ。
非常食のカンパーニャを5つほど。
(パンのようなもの)
あと万が一の薬箱にあれとこれと――――



トントンッ

「スノウー!準備できたかしら?」

村長の所で別れてから一時間がたった頃私の家の玄関が叩かれた。この声はフィーラか。ちっ、どうせならディオンが向かえに来てくれれば良かったのに。

「ちょっとあんた。今すごく失礼なこと考えてないでしょうね?」

恐ろしい。扉の向こうの奴には本来備わっていないはずの女の勘が働いているらしい。いや心は女だからそーゆー部分は関係ないのかな。

フィルレイトのことを普段は散々美人だとか恋敵とか、女として対等に見ていると言うのに、今思っていることは彼女にとって凄く失礼な事だとスノウは分かっているのだろうか。

「ちょっと待って、今出るー‼」
「流したわね」

ドタドタ…キィィ

「おっお待たせ〜ごめんごめん」
「……」
「?ごめんて」
「……あんた」
「?ん、何?」

「あんた……その格好で行くつもり!?」
は?
「え‼だめ?どこが駄目!?普通じゃない!」

私の格好は普通の膝下まであるクリーム色のワンピースに、お気に入りのふくらはぎが隠れるくらいまでの丈のブーツ。それに荷物をコンパクトにまとめたリュックをしょっている。

はて、どこに問題が?

「私が言っているのは、その剥き出しの頭のことよ!」
「頭?」
「そうよ」
「え、良くない?フィーラだって頭出してるじゃん」
「あんたの場合はそうはいかないの‼」

私の見た目は自分ではそこそこ平凡だと感じている。身長は女の子の平均155〜160ぐらいだし、太ってはいないがそこまで痩せ細っているわけでもなく肌も平均的な白さだと思う。

唯一他人と決定的に違う所をあげれば髪と瞳の色だろうか。
太陽の光を浴びると一瞬水色に輝くミントグリーンの腰あたりまである少しウェーブがかった髪の毛に、瞳は色素が少し薄いアクアマリン色で猫の目のように少し大きいのがコンプレックスだ。
(というか猫が嫌い)

この国では金、黒、茶色などの髪の毛の人が多く、私のような髪色の人はめったにいない。めったにいないというか一人も自分以外にみたことがない。
王都のほうでは髪の色を人工的に変えることができる科学剤が流行っているらしいけど、人工物と本物じゃわけが違う、と王都に行ったことがある友達のマリーが私の髪を見てボヤいてたことがある。

とにかくそれくらい珍しいものらしくて、私は毎日見飽きているから何の特別感もないが周囲は違うようだ。

「あんたね、これからどういう所へ行くかわかってるの?王都よ王都。それまでの道のりでどこかの村や町に寄るわよね?山賊が出そうな獣道だってとおるかもしれないわよね?」

悔しいほど女顔負けの美形がグッと顔面どアップにガンつけられる。

「あんたの容姿だとそういう所で一発で悪い輩に目つけられる可能性が高いのよ」

聞いたことはある。この村ではないが見目の良い女、珍しい肌をした人、奇特なものをもっている人を賊や悪どい貴族などが拐って売り物にしたりしていると近所のお母さん達が話していたのだ。
世間は物騒だと子供ながら思ったものだ。
…なるほど。

「…でも『バサッ』〜っぶは!」
「これを被ってなさい。絶対に人前で外しちゃだめよ」

乱暴に投げられたのは白いローブ。くるぶし下まであり大きなフードがついていて、思わず眉間にシワが寄る。

「言っておくけど拒否は許さないわよ。」
「〜っだって、せっかくディオンと四六時中一緒にいれるのに顔隠してたら楽しめないし距離も近づかないじゃないの‼」
「あ〜らそれは私にとって好都合だわ」

――――――こんのオカマがぁ‼

「んもぅっ、早くディオンの所に行くわよ!」

ガバッ

フードを無理矢理被せられ手を引っ張られていく。

「前が見えないわ!」

というか今気づいたのだが、彼女はわざわざこれを見越して白いローブを持ってきていたのだろうか。

…なんて用意周到な。

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