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お礼として小話を用意しました。楽しんでいただければ幸いです。




DIO承(転生あるいは○巡後のお話)





巨大な駅は今日も混雑していた。
だだっ広いコンコースを、人種も年齢も様々な人々が目指す方向へと絶え間なく行き交う。
様々な路線が乗り入れる、アメリカ屈指の利用者数を誇る駅。
DIOと承太郎は、その混雑を見下ろすラウンジにいた。ある長距離列車の専用ラウンジだ。改装されたばかりの室内には品の良いソファが並んでおり、眼下の喧騒もここまでは届かない。暖かい珈琲の乗ったテーブルを挟んで承太郎の向かいに座るDIOが、寛いだ様子で膝を組んだ。彼は正装に近いスーツと外出用のスプリングコートを装備しており、洒落た紺のネクタイがくすみのない金髪に良く映えている。

「真の運命とは魂に刻まれているものだ。私とお前が出会ったようにな。」

いきなり何を言い出すのかといぶかしむ承太郎に、DIOはガラス越しの眺めを見遣って示した。

「もし、最初の出会いがあの人混みの中で、単なるビジネスマンと旅行者というアカの他人だったとしても、私はお前に気がつくだろう。」

「……」

承太郎は運命を信じてはいない。出来事の全ては己の行動の結果だと思っている。だが、それを口に出すとDIOが煩いので、あえて沈黙して話を打ち切る方向へ持って行こうとした。

「承太郎、また運命など夢物語だと侮っているなッ!」

図星を突かれ、渋い顔で目の前の喧しい男を見遣る。

「お前も私に気づくはずだ。魂が惹かれあっているのだからな。」

自信たっぷりに宣言するDIOに辟易しながらも、内心では有り得ない話でも無いと思った。すれ違いざまに目が合った瞬間、互いに逸らせなくなりそうで……
だが、それを認めてやるのはシャクだった。

「てめーはタダでさえ目立つんだよ。俺に限らず誰だって目が行くに決まってるだろうが。」

今日も、ここまでの道のりで人々の視線が容赦なくDIOに注がれるのを感じた。とばっちりを受けるこちらの身にもなってみろ。たかが数日の出張なのに、どうしてもと強要されて見送りに来た甘さを後悔した。

「安心しろ。お前が見逃したとしても、私が即座に確保し二度と帰さんからな。」

「人さらいでもするつもりか。」

その際の台詞は「私と結婚しろ!」かもしれない。初対面の承太郎相手でも、DIOなら言うに違いない。その時、自分はなんと答えるだろうか。

「もう電車がホームに入ってくる時間だろう。とっとと行け。」

「む……」

腕時計で確認し、DIOは席をたつとブリーフケースを手にラウンジを出た。すぐ近くにホームへの直通エレベータがある。傍らに控えていた係員が二人を迎え、笑顔で会釈しながらボタンを押して箱を呼んでくれた。このエレベータに乗るのは乗客のみだ。

「つまらん。お前も一緒に来ればいいのだ承太郎。チケットなら今からでも用意できるぞ。」

ため息混じりにDIOが我が儘を吐く。

「ガキか。遠慮なく1ヶ月でも1年でも出張して来い。」

冷たく突き放すも、我ながら呆れるほど余計な一言が零れ落ちた。

「俺がてめーの顔を忘れたとしても、運命の相手なら一目で分かるんだろ?」


口を開けたエレベータと係員の目の前で、DIOに抱き締められ唇を奪われた承太郎なのでした……















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