紅い心
□紅い心 〜嫉妬〜
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セレナから出た二人は秋山のアパートへと歩いていた。
「何であんな誤解をされるような言い方したんですか?」
名前の前を歩く秋山の背中に、少しだけ強めの口調で訊いた。
「……嘘は言ってないよ」
こちらを見ずに言う秋山の口調は落ち着いていて、それが何となく不安な気持ちにさせる。
「そうですけど…」
「真島さんに知られるの嫌だった?」
「………」
彼の問いに何と答えていいのか分からず言葉を詰まらせる。秋山もそのまま無言で歩いた。
そうしているうちに目的地に着く。
部屋の扉の前で秋山に礼を言い、鍵を開け中に入ろうとドアを開けると名前の背中がグイッと押された。
押し出される形で部屋の中に入り、慌てて振り返ると後ろ手でカチャリとドアを閉める秋山がいた。
「あ、秋山さん!?」
「真島さんに会うんだったら、一言俺に伝えて欲しかったな……」
静かな口調だが、暗い部屋の中、窓からわずかに入ってくる光でぼんやりと照らされた顔は怒っているように見える。
「ごめんなさい……私…」
ここは素直に謝ろうと口を開くと、秋山は表情を崩さないまま一歩名前に近づく。
思わず自分も一歩後ずさった。
「まあ、そうだよね。告白された男に、今から自分の想い人に会うなんて言いづらいよね?」
微かに口元に笑みを浮かべ、また一歩足を出す。
距離を保つように名前も後ろに退いた。
こんな秋山を見るのも、彼が怖いと感じたのも初めてだった。