秘密の部屋
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「君たちを見てすぐに思い出す事ができなかった。
その事を私は猛烈に反省しているよ」
いつも通り、談話室が混雑してくる前に寮を抜け出した
アルフレッドとリオーネは癖のようになっているその行動を少しばかり憎んだ。
二人の道を塞ぐように現れたロックハートはローブを広げ仰々しくお辞儀して見せた。
その後、握手を求めてきたが、
アルフレッドがリオーネを自分の後ろに隠すと
行き場をなくした手をひらひらと振った。
「随分警戒されてしまってるようだ。
だが、安心していい!
私はそこらの何も知らない魔法使いなどとは違い、とても、優秀だ」
アルフレッドの眉がピクリと跳ねた。
ロックハートは続ける。
狼男、雪男、バンシーにバンパイヤ、トロール、グール…等々
ロックハートは次々と自身の偉業を語っていく。
しまいにはあの、醜く呪われた生物の名前まで持ち出してきた。
「私といれば、君達はあの吸魂鬼すらも恐るるに足らない存在になりうる」
「貴方は一度、本当に恐ろしい目に遭う事になる」
リオーネの冷ややかな目にロックハートは小さく悲鳴を上げた。
そろりと前に進みでると冷気を纏った手でロックハートの頬をサラリと撫で、
にっこりと笑った。
流石のロックハートでもこれには恐怖を感じたのだろう。
膝が震え、今にも崩れ落ちそうだ。
「我等が祖、レイブンクローに属しながらこのザマとは。」
「彼女の嘆きが貴方には聞こえない」
勢いよく振り返ったロックハートの顔が見る見ると青ざめていく。
ロックハートの後ろには長い髪を漂わせるゴーストがいる。
ふわりとゴーストが寄ってくるとロックハートはついに腰を抜かし
悲鳴をあげ、逃げ出した。