守りましょう

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「買い物に行って、始業までは漏れ鍋にいようと思っています。」
「そうですか。気を付けて行くのですよ」
「はい…」

家にある必要なものはトランクに詰めた。
別に今年初めての事でもない。それほど手間取る事もない。
事務的に母と言葉を交わし、暖炉に踏み入れる。

『漏れ鍋』

フルーパウダーから上がる緑の炎に包まれる中で、
次に来る衝撃に備える。

_______
煤が舞い上がって思わず噎せてしまった。

「いらっしゃい、シルバスター。
荷物は運んでおくよ。お客人がお待ちだよ、早く行きな」

背骨の曲がった漏れ鍋の主人、
トムと会話もそこそこに店から出されてしまった。
大体、今来たばかりだというのに客人って…

「元気そうだね、ナイル。
少し時間があるんだ。一緒に買い物はどうだい。」
「父さん…」

買い物なんて特にある訳じゃない。
父さんと同じ。
早くあの家から出て行きたかっただけだった。

「今年で何年になるんだ?」
「三年です。」
「そうか。楽しくやっているようだな。」

あまり家にいない父と会話など弾む訳がない。
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