彼岸の鬼
□遊女とコイバナ
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簡素な電子音で目を覚ます。内心嫌なものを感じながら通話ボタンを押す。
『..............はい』
〈あれお前さん、寝起きかえ?〉
『...................................はあ…』
やはりな。そういう意味を込めてため息をつく。朝イチで最悪の相手から電話がかかってきてしまった…
〈失礼なお方やねぇ。ご親切な友人がモーニングコールしてあげたゆうのに〉
『寝起きと分かってるなら寝起きかと聞くな』
〈んふふ、バレた〉
『で?衆合1の花魁がこんな早朝になんの用?』
〈うちにとっちゃ早朝でも何でもありゃぁせん〉
『私にとっちゃ今は早朝なんだよ。せめてあと1時間は寝させてくれよ.......』
〈早起きは3文の得やゆうやないの〉
『早すぎんだよ!4時ってなに!?』
〈おまけが付くなぁ。5文にはなるかえ?〉
『知らんわ!』
ああ、もうすっかり向こう側のペースに飲まれてしまった。寝たい.......
〈んふ、すっかり起きはりましたなぁ〉
『起こされたの間違いでしょうが…で、用件は一体何』
おおよそのことは分かっているのだが
〈久々に会いまひょ!うち、頭堂に会いとぅて会いとぅて仕方あらへん〉
『やっぱりな』
今度はため息ではなくハッキリと言ってやった。
〈肋角はんには許可とってあるから心置き無く遊べますえ!〉
『...................................は?!』
許可とったの?!いつの間に?!!
〈うちの行動力、舐めてもらっては困ります〉
『困るのはこっちだよ!嗚呼…』
なんてこった。逃げ道が無くなった