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□願うのは君と共に、
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リサリサさんとの話が終わったのか、シーザー兄は庭で呆然とする私の元まで走ってきた。


「久しぶりだ…クレハ…ッ!」

変わらないな、と優しく微笑む彼の笑顔と、私の頭を撫でる大きな手のひら。

忘れようとしても、ずっと忘れられなかったこの温もり。
会いたくて仕方なかったシーザー兄が、今はもうこんな近くにいる。


「覚えてくれてたのね…シーザー兄!」

ずっと会いたかったわ、と告げる前に、シーザー兄は私を抱きしめた。
幼い頃とは言え、初恋の人に抱きしめられると言うことは、私の顔を真っ赤にさせた。

シーザー兄がクレハ。と呼ぶ度にフワフワと心が踊る。

嬉しさで溢れる涙と嗚咽。
必死に言葉を紡ぐ私を、シーザー兄はずっと頷いて待っていてくれた。



「大きくなったから、結婚してね。」


願うのはシーザー兄と共に、ずっとずっと。





他にはもう、何もいらないから。
シーザー兄がいれば、それだけで十分だから。


願うのは君と共に、



だからもう勝手にどこにも行かないでね。



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