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□ショートケーキ
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最近オープンしたばかりの、駅前のケーキ屋で買ったケーキ。
期間限定品で、しかも1日50個までの超レア物。

私はついにそれを手に入れることに成功したのだ。
キラキラと光る旬の果物、ふわふわの生地に真っ白なクリーム。
噂以上の出来に、私は限定ケーキに首ったけになっていた。



それなのに、ジョセフはこれを勝手に食べた!
すごく楽しみにしていたのに。

確かに、適当に冷蔵庫の中に入れこんでいた私も悪いのだけれども…

でもそれでも、人のものを勝手に食べるなんて外道極まりない!


「本当に悪かったって!また今度買ってやるからさッ?ね?」

そういう問題じゃない、と口にしようとするがやめておく。
もう呆れてものも言えない。

それでもなお、ジョセフは饒舌に、思ってるのか思っていないのか分からない謝罪の言葉をツラツラと並べた。
それが余計に腹立たしくて思わず、


「ジョセフなんて大嫌い!顔も見たくないし話したくもない!!」


と、口走ってしまった。

もちろん、本気でそう思っているわけではない。
しまった、と思っても時すでに遅し。
ちらっと顔を見ると、下をむいたままジョセフは固まっていた。

しかし、自分からそう言ってしまった手前、謝ることもできない。
変なプライドが邪魔をして、何かを言い出すことができなかった。


「…分かったよ。」



その静寂を切り開いたのは、ジョセフだった。
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