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□燻り満つ
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生温い風が吹く。
仰向けのまま、紅葉は魂が抜けたように、呆然と承太郎を見つめてた。

「承太郎、煙草一本頂戴。」

教室に置いてきちゃった、と発するその顔は神色自若。まさに、冷静そのもの。
その小箱が見つかり次第、自らの学生生活がどうなるかなんて、承太郎も紅葉もあえて考えなくても分かる。
やれやれだぜ、と呆れる反面で、一本ならと火をつけて紅葉の口に捻じ込む。驚き噎せたのも束の間、普段通りの呼吸のリズムが返ってくる。


「私は、この人しかいない!って思って付き合う。けどいつも呆気なく儚く終わる。」

どう思うかな、なんて問になんて返すのがベターなのかと、承太郎は魂が抜けたように、呆然と紅葉を見つめた。その横顔がどこか寂しそうで、遠い目をするせいで紅葉がより一層暗く沈んで見えた。


「終わらせなければいいんだろ?」


紅葉の吸っていた煙草を奪い、適当に足で消す。勿体ないなあ、と笑う余裕のある紅葉に、承太郎は組み敷くような体勢になる。


「この空条承太郎なら、終わらせねぇぜ。」




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