SS書庫
□燻り満つ
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億劫な授業から抜け、承太郎が向かうのは決まって屋上。特に何かがあるわけでもなく、また、何かすることがあるわけでもない。
不良。というレッテルを貼られ、それ相応の振る舞いをしたおかげか、その足取りを止めるものなんていなかった。
「先客か。」
誰もいないと思って開けた、その思い鉄扉の向こうには紅葉がいた。片膝を立て、空を見つめながら仰向けになっている。その耳には、キラリと光るピアス。慣れていない派手な化粧も服装も、きっと"今カレの好み"というやつなんだろう。
「承太郎もサボりなんだね。」
承太郎は紅葉の横に腰を下ろした。なのに、紅葉は承太郎の方を見ないままだった。
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