ドリーム小説(短編)

□『居酒屋 砂模様』にて
1ページ/2ページ

あーもうほんっと寒い。

やっほー、大将。いつものね!


そうそう、1時くらいにまた結構降ったらしいじゃん?雨。

仕事でずーっと事務所の中だし全っ然気付かなかったけど。


え?雷鳴ってたの?!嘘、そこまでは知らなかった。

最近多いよねぇ、異常気象だよホント。


あーおしぼり暖か〜。

でも早いなぁ、この前まで夏だったのに、……て、


バクラ…!?


何してんの?あ!またそんなに飲んで。

大将!言ったじゃんコイツ高校生だから、飲ませちゃダメだって!

いやいや、儲かってもイカンってば!


もう…何してんのさ…端っこで突っ伏してるから全然分かんなかった。


大将、ごめん席こっち移るわ。

はーい、レモンサワーありがと。


「…チッ、うるせぇのが来た。」

あんたの笑い声の方が煩いっての。

何飲んでたの?

「……秘華酎ロック。」

焼酎かい!オッサンかあんたは!

…とりあえず、乾杯だけ付き合ってよ。乾・杯!


(カラン☆)


何、また突っ伏して、そんなに具合悪いの?

何杯飲んだのさ?伝票見せな?

…は?7杯!?バカじゃないの?!


「……今日は酔いに来てんだよ。」


何かあった?ヒドイよあんた、この間より多いじゃん。


「……。」


無理には聞かないけどさ。明日学校無いからって、今からその歳で深酒してると体保たないよ。


「……。」


今日は私もちょっと大変だったんだー。バイトの子が取ってたお客さんの予約、ダブルブッキングしちゃってて。

隣の受付で別の研修の子が、お客さんにカンカンに怒られちゃって。

フォローも骨が折れたわ。代わって色々言われたから。研修の子も真面目ちゃんだから、事務所で泣き出しちゃうし、今度はそっち慰めて。

だから今日はちょっとお酒でラクしたい。


「………くだらねぇ……。」


でしょ?そんなことに気張っちゃってさぁ。

なーにやってんだか。ま、実は今日は元々ここに飲みに行くって決めてたけどね。

私も明日は休みだし。久しぶりに自分のための買い物でもしようかな、

この前可愛いブーツ見つけたから買いたいし、Latiasの香水と新しい口紅も欲しいなぁ。


「……男も居ねぇくせに。」


何をっ!あのねぇ、彼氏居なくても友達とか

同僚と食事・買い物、お洒落の出番は沢山あるし、忙しくってお金使うんです!

自分ひとりの楽しい買い物はなかなか無いんだからね?

…大将、トマトサラダと里芋の煮付けちょうだい。あと、鶏唐。


「…テメェみたいな煩ぇ奴も、ひとりが楽しいのかよ。」


テメェって言うな!そりゃぁそうよ。

皆でワイワイする方が多いし、好きだけど…自分だけの時間には敵わないなぁ。

やっぱり無意識に人に合わせたりしてるんだろうね。

バクラはすごい一匹狼って感じ。


「…あぁ、死霊を除けばなァ。」


ん?…しりょう?あ、この野郎また飲んで!もう止めなって…!


「……もうすぐ、3000年前の世界に帰んだよ、オレ様は…。」

ぷっ、はは!何3000年前の世界って!酔っ払いすぎ!

「テメェとも…会えねぇなぁ……」

はぁ、どこかに長期滞在でもするわけ?

まさかロクに発展してない民族村とかじゃないよね?3000年前、だもん、くくくっ。

「……ご名答。」

うそ?え、マジじゃないよね?

冗談でしょ、何村の何民族?なんちゃって。

「……クル・エルナ村……」

クル・エルナ?聞いたこともないよ!何処だろ…中東かな?

…サンキュー大将。あと、緑茶ハイ追加で。

バクラ、すっごい酔っ払ってるよ。大将のせいだからね〜。


鶏唐、食べる?

「…要らねぇ。」

ふぅん、ちょっと見てみたい、バクラがその村にとけ込んでるとこ。ぷふっ、全然想像つかないけど!

「……一緒に来な…。」

やーだよー!

「…つまんねぇ仕事してる位なら…連れてくぜ……。」

生意気っ、働いたことないくせに。

「うるせぇ……オレ様は命懸けてんだ…。」

何それ。…まぁ、ホントにそんな聞いたことない村に行くのなら、ある意味では命かけてるかもね。

日本みたいに、何でもは無いいんだろうなぁ。

電話も無くて、食料とか自分たちで採って…

くだらない事で怒られたりはしないんだろうけど、

もっと、普段の生活が生死に直結してて、生きるために頑張っていて。

そんなイメージ。


「……盗むんだよ。あっちじゃ、何でもな…。」

コレ!何言ってんのそんな訳ないじゃん!

お、緑茶ハイ早いじゃん。いただきます。


「…全部手に入れてやるぜ…オレ様は……王権も…千年アイテムも…。」

……???…なぁんだ、ひょっとしてボードゲームか何かの話…?

ちょっと信じかけたじゃん。


「…闇の力も…。」

ん、もう…わかったわかった。あんた酔いすぎなの。

寝てな。…うわ、バクラ髪柔らかっ。


「…オレ様に……盗めねぇもんなんかねぇんだよ…。」


はいはい。ポン、ポンっと。


「…お前も…な………。」


…!ふふ、生意気なヤツ。

「…。」


寝ちゃった、黙ってれば綺麗な顔してるのに。

じゃぁさぁ、バクラ…何とか村はやりすぎだけど…

ありったけのお宝稼いで、いつか、いろんなとこ旅行に連れてってよ。

…いろんな人とデュエルしたり、バトル・シティで飛行船乗ったり、

聞いてりゃちょっと羨ましいんだからさ。


あんたが何処か遠くに行っちゃっても、私、多分こんな感じで過ごしてるから。

のんびり待って、神出鬼没のあんたがひょっこり出たら、

お酒と土産話でも強請ることにするからね。



…大将、コイツ潰れちゃったから、私がまとめて払うよ。

はい、ごちそうさま。


うん、何かよくは解かんないけど。先々のこと、色々考えてたみたい。

私なんかより、ずっと大きい事抱えてるのかもね。

いつも聞き出そうとしたって、酔っ払ったって、絶対に具体的には教えてくれないんだな…。

ま、何でもやれるよ。自分の芯は曲げない男だからさ、バクラは。


ん?タクシー?大丈夫、その辺で拾うから。

帰ろ、バクラ…。私の肩使いな。すぐそこまで歩くのだけ。

ほら行くよ?


んじゃぁ大将、また来るねー。おやすみなさい。


……ほんと、今日は寒いねぇ…。

ちょうど左肩だけ、良い風除け君が居るけど、ははっ。

あれだけ飲んで、千鳥足にもならずにしっかり歩けるじゃん。上等上等。

…よーし、この私に任せな?へいっタクシー。


運転手さん、美術館の近くの、ラプラス童実野ってマンションまでお願いしまーす。

…私と家近くてよかったねぇ、あんたも。


……

……

あー、眠くなってきた。

………バクラぁ……ちょっとだけ…私にも、肩、貸してね……。






「おい、着いたぜ?」

…ん…?

「降りるぞ、起きろ。」

…あ、着いたのかぁ。お金…。

「もう払った。」

ん、そっか…ありがと。


良かったぁ、バクラ酔い覚めてきたじゃん。

部屋戻ったら水飲んで、ちゃーんと休みな。

じゃぁまたねぇ、

え?泊まれ?

…大丈夫だよ、私そんな酔ってないし、ウチすぐそこなんだから。



…!!

バクラ?!



「盗めねぇもんはねえって言っただろ…嫌がったって離しゃしねえぜ。」


……でも…ちょっ……離して、ねぇ……?

……んー………参ったなぁ…わかったよ……。


…あのさ…一応聞くけど…からかってる…?

私、全然可愛くないし、恋に不器用だし、お節介だしさ

……皆が思うほどサバサバした強い女じゃない。

だから…酔っ払ってても、あんたにこんな事されたら、私ホントに、心持ってかれそう……。

酔った勢いだったら、今のうちに、そうだって言ってほしいよ……。


「チッ、こうしねぇと解んねぇかよ。」


…あ…っ…!

バクラっ、……んん………!
……………………


「本気に決まってんだろ。」


  
FIN
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ