菖蒲の勾配

□獄卒がブラック本丸の審神者に!?
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「いててて、たっく酷ぇ目にあったぜ」

「だ、大丈夫…?」

「すまねぇ」

「つい…。安定が刀解されちゃうのかと思って…」

「しねぇよ」

身夜が和泉守と堀川に殺されかけ清光と安定がなんとか弁解し、4人全員が手入れを終わらせたところだった。始めは警戒していた和泉守と堀川だったが、話を聞いているうちに和解したようだ。身夜の竹を割ったような性格のせいか、安定を助けて信じても良いと思われたのか、その両方か。ともかく、身夜と新撰組の刀の関係は良好そうだ。

「取り敢えず、今本丸にいる奴らの名前を教えてくれ」

身夜はノートとペンをもって聞いた。刀剣男士人数などをの把握しておきたいらしい。

「え〜と、短刀は…今剣と平野と乱、博多に薬研、五虎退、小夜くらいかな」

「脇差しは、僕と鯰尾さん、骨喰さんですね。」

「打刀は…俺達と鳴狐、宗左と陸奥守と山姥切、大倶利伽羅に長谷部と…」

「あぁ、歌仙ならわかるぜ。斬り殺されたからな。」

「…てめぇ、気遣いをわかってて言ってんのか?わかんねぇで言ってんのか?」

「クックックッ、さぁな?で、太刀は?」

「お、おう。確か一期と燭台切と江雪、獅子王だな」

「大太刀は蛍丸と石切丸。槍は御手杵、日本号。薙刀は岩融…これだけだよ」

身夜は刀剣男士たちの名前を写しながらふとした疑問を感じた。

「この燭台切と長谷部とおおくりから?を見かけてすらねぇんだが、どこに居るんだ?」

「……部屋から出て来ないんだよ。」

「そりゃまた、どーして?」

「…それが」

新撰組の刀剣男士たちの話をまとめると、長谷部は主命に逆らわないので前任の審神者からよく夜伽に呼ばれていた。さらに短刀や脇差しなど姿が幼いものたちや他の刀たちが呼ばれれば代わりにいっていた。審神者は従順な長谷部を気に入り度々夜伽に呼んでは、手酷く抱いていたらしい。それに苦言を呈したのが長谷部に好意を抱いていた燭台切光忠と大倶利伽羅だった。しかし、審神者はそれを聞かずに長谷部を抱いた。時に軽傷や中傷にまでなっていた。そしてついに、

「主は、長谷部と大倶利伽羅に…殺された…その後に燭台切と大倶利伽羅は長谷部を連れて引きこもったままなんだよ」

「安定、あんな奴主なんて呼ばなくてもいいよ」

安定が結果を語り終えると清光が苦い顔をしながら言った。事前資料から主に愛してほしい、と言うメンヘラだと思っていた身夜だったが、流石にここまで酷けりゃ変わるものだと認識を改めた。

「聞いた限りじゃクソだな、その男」

「あぁ、たいしたクソ野郎だったぜ。重傷になっても手入れはしねぇ、気に入った奴らを呼び出しては酷くして、死んで当然だ」

「確かにな。…あぁそーいや、その男は地獄行き確定だとよ、ってどーした?お前ら」

和泉守に相づちをうち、肋角から聞いたことを伝えてみれば清光たちは微妙な顔をしている

「えぇと、あなt…身夜は僕たちを裁きに来たんじゃないの?」

「えっ?全然違うけど?俺は闇落ちしたお前らを『コウセイ』させに来たんだ。つーか、いきなりどうしたんだよ?」

「いや、兼さんの『死んで当然』ってのに同意しちゃってるし、それに…前任の審神者が地獄行きってどういうこと?」

堀川の質問は他の刀たちも訊きたかったらしく大きく首をふっている。清光と安定には自分が【獄卒】だ、と伝えているが和泉守と堀川は未だ人間だと思っているし、清光と安定にも目的は伝えていない。

「あ〜じゃあ言うけどな、俺は獄卒だ」

「獄卒って地獄の鬼の!?」

「あぁ。で、このブラック本丸は人間じゃ立て直すのが難しいってことで俺が来たんだ。」

「へぇ、そうだったんだ…。それでアイツが地獄行きって?」

「あのクソ野郎が落としたのは末席と言えど神、地獄行きは十王が審査したところで火を見るより明らかなんだよ。質問が終わったなら広間行けー、飯作ってるから」

驚きすぎて絶句している四振りを置いて身夜は広間へ足を進めた。
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