菖蒲の物語〜獄都事変〜

□すれ違い
1ページ/1ページ

斬島視点

「田噛ー田噛ー!!」

「うるせぇ」

いつもお前は…

「…許してやるから、殴らせろ」

「ごめんなさいぃぃぃぃ」

あいつばかり…

――――――――――――――――――――――――――――――――――

俺は、田噛が好きだ。他の仲間に対して持っている家族愛ではなく、恋愛対象として。明らかに実りようの無い恋だ。
俺も田噛も男なのだから。田噛にこの思いを知られるわけにはいかない。軽蔑され、避けられるのは、火を見るより明らかだ。そうなるなら…仲間として、せめて……側に居たい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

田噛視点

俺は、斬島が好きだ。他の奴等に対しての好意とは別の…、言い表せねぇ。

だりぃ。正直この思いが成就するなんざ思ってねぇ。俺もあいつも男だ。俺があいつの立場だったとする…ありえねぇ、気持ちワリィ。告白なんざしたら、結果は見えている。避けられる。俺に出来るのは、この思いに蓋をして仲間として、振る舞うことだけだ。



佐疫視点

最近、斬島の様子がおかしい。俺や平腹達の前じゃ変わらないけど…田噛に対して随分よそよそしい。田噛もそんな感じだけど…。仕事もあまり一緒に行って無いみたいだけど、大丈夫なのかな?

「佐疫ー、肋角さんが呼んでるよ。」

「…木舌!!ありがとう、行って来るよ」

「どういたしまして…随分ボーッとしてたみたいだけど、どうしたの?」

鋭い、さすが最年長

「いや、ただ斬島の様子がおかしいなって…思ってね。」

「確かに…」

斬島の方を見ると田噛と平腹がいた。平腹とは普通に話してる。…けど、斬島も田噛もどこかよそよそしい。

「違和感駄々漏れだね。」

「本当に…」

恐らくこの違和感には当人たちだけは、気づいてないんだろう…。谷裂や平腹も気付きかけているのに…。
「…佐疫」

「何?木舌?」

「アレ以上発展しないならさ…俺が斬島を奪っても良いよね…」

俺の親友は、随分愛されているらしい。

「俺も負けないから。…肋角さんの所行って来るよ」

ライバルはとにかく多いらしいが、最終的に斬島が一番幸せになれるように…、そんなことを思いながら肋角の執務室に足を進めた。


斬島視点

今日は、田噛と平腹との任務だ。正直、緊張しているが、仕事は仕事。切り替えをしなくては。何時ものように、平腹が何処かに突っ走り、田噛がサボり、結果俺は1人で探索している。今回の亡者は、失恋し命を絶ったらしい。

「…失恋か」

告白もせず諦めている俺に比べれば、この亡者はどれだけ勇敢だったことか。称賛したいところだが、この亡者がしたことは、罪だ。

「許されざる者には…罰を」

気を引き締めていかなくては…!!

――――――――――――――――――――――――――――――――――

田噛視点

今日の任務は、平腹と斬島とだ。ボロがでないか心配だが…何時も通りにできたのか…?確か亡者は、失恋し自殺したらしい。諦められない…か。
「俺も同じだな」

いや、亡者の方が勇気があるか。

「とりあえず…任務だな」

告白ってどうやんだ?

――――――――――――――――――――――――――――――――――

斬島視点

「お前が亡者か?」

ビルの屋上には、黒髪の女が佇んでいた。俺が声をかけるとゆっくり振り返った。

『…誰?』

「俺は獄卒だ。お前を閻魔の御前へ連れて行く」

『そう…なら私の話、聞いてよ。そしたら、おとなしくついて行くから。』

「…分かった。話を聞こう」

面倒だがそれで解決するなら、良いんだろう。

『ありがとう』

そして亡者は語り出した

『私、幼馴染みが好きだったの…でも彼は私の親友と付き合っていたの。彼が好き、でも…親友も大事なの。だから死んだのに、他人に迷惑かけるなんてね…
 ありがとう、獄卒さん。話を聞いてくれて』

「あ、あぁ」

『獄卒さん、好きって感情は伝えた方がいいと思うわ。』

「何故…分かった?」

『勘よ』

亡者を連れて獄都レポートへ戻った。亡者を引き渡して、館に帰る。

「斬島」

「…!どうした、田噛?」

「……だ」

「?すまない、聞こえないのだが」

「お前が好きだ」

田噛は、今なんと言った。俺が好き?田噛の隣にいれるのか?

「オイ、泣くほど嫌か?」

「ちがっ…その…」

「なんだ」

「俺も好きだ」

腕を引き寄せられた、そう思ったら抱き締められた。

「妙な遠回りしてたな」

「どうした?」

「何でもねぇ、もう離してやんねぇからな」

「あぁ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――

オマケ・田噛視点

「やぁ〜玄関でお盛んだね〜」

「田噛、斬島にナニしてるの?」

此処玄関だった。つーかお前ら武器取り出すな。どうやら、俺の恋人は愛されてるらしい。まぁ、奪われる気はねぇがな。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ