菖蒲の物語〜獄都事変〜

□4人でお出掛けの話4
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「斬島ー斬島ー!!何処っ!?返事して!!」

屋台村で買い物していたら、斬島が居なくなっていた。かなり生者が居るし、人の流れに巻き込まれたのかもしれない。

「すみません、黒髪の青目の男性を見かけませんでしたか?」

「えっ…、見てませんケド」

「すみませんでした」

斬島何処!?何処行っちゃったの!?
ほとんど人通りの無い道を走る。生者は少ないが竹灯籠はそこらじゅうにある。多少の低いざわめきが聞こえる。地図を見れば壁のすぐ隣に紅葉がライトアップされてる事が書かれている。斬島を見つけたら一緒に見に行こう。今までとは違って暗い所があった。ここまでの道は竹灯籠の灯りにかすかに照らされていたが、そこだけは完全な闇だった。

「…トンネルか」

耳をすませば、なにやら言い合いが聞こえる。複数人の…1つは斬島だ!!

「だから、はぐれてしまっただけで1人ではないと…」

「良いじゃん、良いじゃん。はぐれちゃったんでしょ?だったらさぁ、俺らとまわろうよ」

「そーそー。俺ら地元民なんだよ、色々と案内してあげるからさ」

「案外そのはぐれた奴だって他のコといるかもよ?」

「斬島、ここに居たの」

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「ん…佐疫は何処だろう?」

辺りを見回したが佐疫どころか人影自体が無いトンネルの中だった。先程まで屋台村にいたはずだが…人の流れに巻き込まれてこの辺りまで来てしまったらしい。

「ふむ…これからどうするか…?」

佐疫と合流しないことにはどうするもこうするもないのだが。携帯電話は…使い方がわからない。人の多いところに行って余計にはぐれるのもアレだしな…。だからといってこのままというのも…。

「ねぇ、キミ1人ぃ?」

そこで初めて気づいたが、軽薄そうな男が3人立っていた。佐疫や平腹と同じような明るい髪は2人より傷んでいるように思う。ちょうどトンネルの端に居たせいで囲まれる。

「1人だったらさぁ、俺らと遊ばない?」

「はぐれただけだ。」

「じゃあ1人なんじゃん。遊ぼうよ」

「これから探すんだ」

しつこい。正直倒してでもやりたいが、生者に手を出しては、亡者と同じだ。長くなりそうだが、話し合いで解決したい。そう思っていると急に手を捕まれる。

「良いから、ねぇ?行こう?」

「だから、はぐれてしまっただけで1人ではないと…」

「良いじゃん、良いじゃん。はぐれちゃったんでしょ?だったらさぁ、俺らとまわろうよ」

「そーそー。俺ら地元民なんだよ、色々と案内してあげるからさ」

「案外そのはぐれた奴だって他のコといるかもよ?」

「斬島、ここに居たの」

「…!佐疫!!」

気づくとそこには佐疫がいて、男たちは顔が青ざめている。

「俺の恋人に…何か?」

佐疫が何時もと違う、威圧感のある口調で言う。表情も何時もの微笑みではなく、笑ってはいるが恐ろしかった。

「な、なんでも…ありま、せん」

「そっか…じゃあ、行って良いよね」

もうそれ以上言葉が出ないのかコクコクと首を縦に振る男たちを尻目に佐疫は笑う。

「斬島もう離れないように、手、繋いどこ」

「あ、あぁ」

佐疫と手を繋ぎ半ば引っ張られるように歩く。

「佐疫、何か怒っているのか?」

「斬島に対しては無いよ。あ、でも強いて言えば、勝手にどっか行っちゃったこと。気を着けてね」

「わかった」

「よし、じゃあ楽しもうか」

「あぁ」

「あっ、そうだ」

佐疫が何か思いついたような声をあげると首筋にピリッと痛みが走った。

「?」

「跡つけたの、俺のモノって印」

佐疫は上機嫌そうに言い、あっちに紅葉が有るんだって、と笑う。灯りが無くて良かったと思う。顔が真っ赤になっている事がバレないから。

(そう言えば佐疫はあの男たちに何かしたのだろうか?)

(俺の斬島に手を出すなんて…万死に値するね。にしても斬島可愛いな。)

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クッソ、斬島何処だ。佐疫から連絡がきて、走り回って探しているが一向に見つからねぇ。背格好が似た奴が多い。青い目を探すがそうそう見つからねぇ。

「すまねぇ、黒髪青目の男見てねぇか?」

「えっ何々?はぐれたの?ねぇー皆青い目の男のこ見てないー?」

「えっ、見てなーい」

「てか、どーしたんだよ。急に」

「なんかはぐれたんだってぇ」

「青目って外国人?だったら目立つんじゃね?」

「はぐれたんなら、いっしょ行こー」

…話しかける奴ら間違えたかもしれない。女の1人に話しかけただけだったが、グループで行動していたらしく大人数に話しかける事になってしまった。つか、最後の奴。人探してるって言ってんだろ。何でお前らと一緒に行くんだ。

「ソイツ見つけたら帰るから。」

「えぇー、いっしょ行こー!!」

「あはは、ノンは一回言い出したらしつこいからなぁ。諦めなよ、なんか奢るから」

知るか。お前らが納得させろよ。

「あ、ケータイは?持ってるなら待ち合わせすれば?」

成る程…いや斬島の機械音痴はなめたらいけない。この前も電話にでる事すら出来なかった。

「相当な機械音痴だから無理そうだ」

「マジで!?機械音痴とかホントに居たんだ」

まぁ、最近の奴らからすればそんなもんだろう。

「ねぇねぇ、おにーさん。いっしょ行こーよ」

「だから、連れがいるんだよ」

「良いじゃん、今いないじゃん」

「だーかーらー、諦めなよって。ホラ行こ。案外歩き回ったら見つかるもんだよ」

ふざけんな、何なんだよ。コイツら。俺の話し聞いてねぇだろ。手、捕んでんじゃねぇーよ。腹立つ。

「オイ」

「?…!?」

聞き慣れたが、聞き慣れない低い声。そこには平腹がいた

「お前らさぁ、田噛になにしてんの?」

「ひっ…あ、あぁはぐれたって人か。よ、良かったね見つかって。じゃ、じゃあ」

「オイ、1人で逃げんな」

「まっ、待ってよぉ」

逃げるようにアイツらが走り去ると平腹は何時ものお気楽面になった。

「大丈夫か?田噛」

「あぁ、そういや斬島は見つかったのか?」

「うん、佐疫からLINEきてたぜ」

そう言われ、確認してみると確かにきていた。マナーモードにしなけりゃ良かった。

「そろそろ、帰るって」

「わかった、はぁ。疲れた、ダリィ」

「何時も通りだな」

平腹が手を繋ごうとする。うぜぇ。

「何してんだよ」

「田噛は俺のだろ?だから変なのが寄ってこないように。あと…田噛が大好きだから!!」

…夜で良かった。自分でもわかる程顔を赤くしてるなんざ、バレたくねぇ。

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