菖蒲の物語〜獄都事変〜

□カゲロウデイズ パロ
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8月15日午後12時半、天気がいい
病気になりそうなほどの日差しの下で
俺は恋人の斬島と喋っていた。男同士だけど、告白して漸く恋人になれたんだ。
「しかし、夏は嫌いだな」
斬島は、黒猫を撫でながら呟いた。斬島は、夏そんなに嫌いなのかな?
流石に暑いので場所を変えよう、ということになったので公園を出る。斬島は、自分に随分となついた黒猫を飼うことにしたらしい。
公園を出た途端、斬島の肩の上で大人しくしていた猫が逃げ出した。斬島がその後を追って横断歩道に飛び出してしまった。信号は……赤に変わった。
バッと通ったトラックが斬島の身体を轢きずっていく。血しぶきの色と斬島の匂いが混ざりあってむせかえる。そこに、『ヤツ』はいた。俺と同じ容姿で、しかしその身体は陽炎の様にユラユラとしている。嘘の様な現象と斬島が事故にあったことで俺は(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ)心の中で必死に叫んだ。ソレすら嘲笑う様に『ヤツ』は、
『嘘じゃ無いよ』
と笑っている。
夏の色を、掻き回す様な蝉の声に……全て眩んだ

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携帯のアラームがベッドの上で鳴り叫んでいる。
今は、何時だろう?
携帯を見ると8月14日の午前12時過ぎ位を表示していた。何時もよりやけに煩い蝉の声を覚えていた。
でも…少し不思議だな。あの夢と同じ公園に服装、黒猫までいるなんて。でも猫は俺に引っ付いてたし、所詮夢の中の出来事だ。斬島には夢の話をしていない。夢であろうが自分が死ぬ何て嫌に決まっている。公園を出るとこまで夢と同じだった。会話も一言一句違わずに。黒猫が逃げ出した。斬島は、追いかけようとしたけれど、俺が
「もう、今日は帰ろうか」
そう言えば、「あぁ」と返してくれた
帰り道に抜けた時…周りの人は上を見上げ口を開けていた。
落下してきた鉄柱が斬島を貫いて突き刺さる。劈く悲鳴と何処からか聞こえる風鈴の音が木々の隙間で空回りしている。わざとらしい『ヤツ』が、
「夢じゃ無いよ」と笑っている。眩む視界に斬島の横顔を見ると笑っている様な気がした。

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何度世界が眩もうが、『ヤツ』が笑って奪い去る。何度も何度も繰り返してもう何十年経っている気がする。だけど、もうとっくに気が付いていたんだこんなによくある話なら、結末はきっと1つだけだ。繰り返してきた夏の日向こう

バッと押し退けて飛び込んだ。その瞬間にトラックにぶち当たった。血しぶきの色と斬島の綺麗な青色の瞳と軋む身体に乱反射した。文句ありげな
『ヤツ』に「ザマァ見てみろ」って笑ったら、実によくある夏の日のこと
そんなナニかが此処で終わったんだ。

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目を覚ました8月14日のベッドの上で、斬島はただ
「また、駄目だったな」
と1人猫を抱き抱えてた
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