戦国BASARA

□好きな人の好きな人
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君が僕を呼ぶ。
僕はそれに従順に答える。
背中越しに感じる君の体温が嬉しい。
君が僕に命を預けてくれる。
それだけで生きていけるような気がする。
いや、僕はきっとそのために生きている。
ずっとずっと僕が護り続けると約束するよ。
だからどうか、この手が届く場所から離れないで。

それは稲妻のような衝撃。
固く繋がっていた君と僕を、引き剥がすかのように現れたあいつ。
焦げそうなほどに熱い君を、さらに熱く燃え上がらせたあいつ。
北からやって来た蒼い龍。
君とあいつは互いに互いを求め、惹かれ合った。
まるで互いが己の片割れだとでもいうように。
いつしか君の心に、蒼いあいつが住み着いた。
口を開けばあいつの名前。
いつもの鍛錬にも、あいつと戦う時のためという立派な理由がついて。

――おかしいな。
あいつはずっと遠くにいるのに。
僕の方がずっと近く、ずっと長く、君の傍にいるのに。
君がどんどん離れていく。

僕は君の影。
君の後ろを行く。
ただ君について行く。

なのに。
あいつは君の前に、隣に、向かい合い、並び立つ。
君と同じ景色を見る。

僕はどうやったって君と並ぶことはできない。
そんなことはあってはならない。

――悔しい。
君の紅い心が、あいつの蒼に染まってしまう。
僕だけの紅い君が、消えてしまう。

ねぇ、君はあいつが好きなんでしょう?

――僕はあいつが嫌いだよ。
君が好きなあいつが大嫌いなんだよ。
君が好きなあいつに、僕は永劫なれやしないんだから。

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