勇者と魔法使いの物語
□蒼の皇女
7ページ/7ページ
「ーーーーっっ!!」
確かに悲鳴を上げたはずなのに声が出なかった。
「あぁ。邪魔が入ると面倒だから音を消したんだ。君の可愛い声が聞けないのが残念だけど」
カイトと同じ青い目がまじまじとセレスの体を眺め回し、その手がむき出しの乳房に触れる。
「人間の裸って案外綺麗なんだね。ユーフィリアもこうだったのかな?」
「っっ!」
ゆっくり揉みながら反対の乳房の先へ舌を這わす。
セレスの全身に鳥肌が立つ。
けれどどうやっても体は動かない。
ただされるがままに愛撫を受け、目に涙が浮かんだ。
魔王は執拗にセレスの乳房を弄び硬くなった先端を口に含んで転がして時には軽く歯を立てる。
その度にセレスの体がビクリと震えるのを確かめてにんまりと笑った。
「初めてなのにいい反応だ。もっと気持ち良くしてあげる」
ゆっくりと草の上にセレスを横たえると片方の手が下腹部へと伸びていく。
「っ!やぁ‥‥っっ」
「声が出るの?凄いなぁ」
足は開かれたままだ。
魔王の手は苦もなくそこへ辿り着いて割れ目を撫でるように上下に動かし、すでに潤んでいるそこへ指先を沈めた。
「あっ!!」
「大丈夫。時間はあるからゆっくり慣らしてあげるよ。でも‥‥、そんなに時間はかからないかもね」
ゆっくりと指先だけ出し入れしながら、もう一方の手は乳房を揉み舌を這わす。
「ん、いやぁ‥‥っ、あっ」
指の動きがだんだん早くなり、掻き回されるにしたがってセレスの息が上がってきた。
「あっ、あぁっ!やめ‥‥っ、んんっっ」
意思に反して腰が勝手に動いている。上ずった様な声も止められない。
背筋を何かが這い上がるゾクゾクする感覚が不快でしかないはずなのにだ。
「本当に初めてなの?こんなに濡れて溢れてるのに」
耳元で囁いて歯を立てる。
「あっ!」
「気持ちがいいんでしょ?ほら、こんなに締め付けて。ねぇ、聞こえる?」
「んんっ、やだぁ‥‥っ」
わざと水音が聞こえるように指を掻き回され、身体がビクンと跳ねる。
「二本入ってるけど感じる?」
「あっ、やっ!あぁっ!」
すでにセレスの体を縛る呪縛は解かれていた。
けれどそんなことにも気づけなかった。
体の中を掻き回され熱が集まっていくのを感じながら、それに溺れようとした瞬間。
唐突に魔王の体が飛び離れた。
「俺の妹に何しやがる!」
聞き覚えのある大きな声とその姿が霞がかる視界に映り込んだ。
「カイト!!てめぇ気でも違ったか!」
「ラス。あれはカイトじゃない」
「でもカイトだろうが。消えたとは言わせねぇぞ」
ぼんやりした頭で体の上に何かが被せられたのが分かった。
「何で気づいたの?」
「気づかないとでも思ったのか?ここは私の結界内だぞ」
「うまく誤魔化せてると思ったんたけどなぁ?セレスの声でも聞こえた?」
「カイト!!」
本気で怒ったラスの怒号がセレスの頭を揺さぶる。
誰に何をされていたのか。
それに気づくと同時に跳ね起きた。
「わ、私‥‥‥!」
全身が燃えるように熱くなる。
白い肌が朱に染まるのを見て魔王がクスリと笑った。
「残念。もう少しでイカせてあげれたのに。でも次は期待していいよ」
「次なんかねぇよ!てめぇはここで殺す」
ラスの全身から金色の炎が立ち昇っているのがはっきりと見える。
本気で怒った時にだけ見えるラスの殺気に火照った身体が冷やされて身震いした。
そんなセレスを抱きしめながらリンが小さく問いかけた。
「交わったのか?」
「っ!」
「まだなんだな。よかった」
安堵の息を吐くリンをセレスは泣きそうな目で見ていた。
何かを言わなければと思って、でも何も言えなかった。
視線を移せば楽しそうに笑っているカイトの姿が見える。
中身は別の魂が入っていたとしてもあれは実の兄なのだ。
その兄の手が。
きつく裸の体を抱きしめる。
「セレス‥‥」
他の誰かなら、身を任せてしまうはずがない。
けれど兄だった。
大好きなカイトだった。
ずっと心のどこかで、願っていたのだ。
兄に抱かれたいと。
一人の女として愛して欲しいとずっと願っていた。
だから。
「君に僕は殺せない。僕を殺せるのは朱璃だけだ」
「そんなモンはやってみねぇと分からんだろうが!」
ラスが抜き手も見せずに斬りかかる。
けれどすでに魔王の姿はどこにもなかった。
「カイト!!」
「次に会うときは花嫁を貰う。ついでに朱璃も返して貰うよ」
「ついでか。落ちたものだな」
リンの小さな声を聞きながら、セレスはずっと封じていた想いが溢れだしてしまわないようにきつくきつく体を抱き締めていた。
.