U:ふれあい

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 荘厳な城の中、静かに時を刻む庭の端。
 圧倒的な緑が各々の生命を主張するかのように風に揺れている。

 湖の隅、大木の下。
 逞しく生える葉が重なり、できた木陰に白い影ができていた。

 影の正体は、静かに寝息を立てる少女。
 その手、その髪、その睫毛――全てがどこまでも白かった。
 頬に僅かにピンクが混じった肌は、彼女の胸が上下していなければ人形だと思う者もいるだろう。その位滑らかで、一切の混じり気のない白だった。

 遠くから少女を呼ぶ声がする。

「ローズ」

 近付いたのは、ブルーを主にした鮮やかな色彩が複雑な模様を成している長いローブを纏った老魔法使い。
 深く刻まれた目尻の皺が、寝ているローズを見て更に深くなった。

 彼は大魔法使い、アルバス・ダンブルドア。
 ローズの肩に彼の手が優しく置かれると瞼が動く。すると、白い世界にふたつの淡いグリーンが現れた。

「……アルバス」
 眠そうな、小さな声が聞こえる。
「すまんの、起こしてしまって。そろそろ時間だったからのう。ついローズに会いたくて探してしもうた」

 様々な肩書きを持つ多忙な彼は、これから数週間に渡り城を留守にすることになっていた。
 そのことを思い出し、ローズはパッと顔を上げる。

「もう行っちゃうの?」
 明らかに寂しいと訴えるローズに、ダンブルドアは頭を撫でた。

「出発する前にお嬢さんとお茶をしたいと思って誘いに来たんじゃがの?」
 茶目っ気たっぷりのウィンクを受け、ローズは表情を明るくし立ち上がる。
 ダンブルドアは辺りに散らばっていた本を持ち、片方の手で白く小さな手を取った。

「たくさん図書館から借りているようじゃの?」
「宿題の参考に借りたんだよ。全部終わったら好きなだけ私の借りたい本を読んでいいって」
「ほぉ。本を読むのはいいことじゃ。……じゃが、外でも遊ぶんじゃぞ?」

 ローズはもちろんと胸を張った。
「大丈夫! 今度ハグリッドが禁じられた森に連れていってくれるって言ってたもの!」
「……その時は、もう一人誰か連れて行くように」

 禁じられた森が何故“禁じられた”と言われているのか少女は知らずニコニコと「楽しみだな」と笑っている。

 留守中の少女の身を案じながらダンブルドアは湖を背にして壮大な城へと向かってローズと共に歩き出した。


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