U:ふれあい
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「セッ...セブ......ルスッ...」
震える声、震える体。
「落ち着け!深呼吸しろ深呼吸!」
その手には、小型のナイフ。
ここは魔法薬学教室の更に地下にあるセブルスの研究室。
今日の午前はセブルスと初歩的な調合を行う予定だった。
知識ではなく、過程を重視した個人授業。
今までの授業では過保護セブルスによって他の生徒に材料を刻ませるか、あらかじめ用意していた。
しかし7年間このままという訳にはいけない。
「え、え、えーと...これ、下にストンってすればいいの?フォークでごはん刺すみたいに?どうする?え、指切ったら痛い?」
「いいから!一緒にやるから!」
焦るローズに危険を感じ、後ろからローズを包んで手を添える。
手元を支えながら刃を降ろせばヨモギの葉がサクッと切れた。
「はわぁ...できたぁー」
初めての感触に感動していると、セブルスがホラ、とさらに細かく刻ませてくれた。
「簡単だろうが」
ふぅ、と息を吐くと、セブルスは後ろを向いて鍋の準備を始めた。
まだ鍋のような重いものは持たせることはできない。
刻んだヨモギでできるモノはーーーと考えているとふにゃっ!となんとも変な声が聞こえた。
嫌な予感がして振り返ってみると、ローズの手の甲からダラダラと血が流れていた。
「こっ...これは、痛い......」
「こら!バカ!一人でやるな!」
「だって...皆できることだから、やれると思ったんだもん」
まじまじと手をみつめるローズ。
「刃物で手を切るとこんな感じにいたいんだね」
「こらっ!」
ヨモギの汁でベタベタになった手で傷口を触ろうとするローズをセブルスは慌てて止めた。
ローズの腕を引っ張り、清潔な水で傷口を洗い傷テープをパシっと貼れば、おずおずとこちらを見上げるグリーンの瞳。
「怒ってる?」
「............怒ってはない」
そもそもこの少女に本気で怒ることなんてできない。
気にするな、と頭に手をのせればニコッと笑顔が見えた。
「これは取っておいて、明日にでも使おう。今日は終わりだ」
「はい! ありがとうございましたっ」
どこで覚えてきたのか、敬礼をする姿に思わず顔が緩んでしまう。
「午後はね、パンを作るの。できたらセブルスにもあげるねっ」
「......今度はジャムでも作るか」
「え、ここで?」
意外そうな顔をするローズに少し心外だ、と思う。ジャムなんぞ煮詰めればできるだろう。
「できないことはなかろう。果物と砂糖があればできる」
すました顔で言うと、表情はそのままにローズが言いにくそうに口を開いた。
「すっっっごい甘い匂いでいっぱいになっちゃうよ?」
.....................。
「...致し方ない」
楽しみ!とローズは笑ってセブルスに抱きつけば、セブルスは誰にも見えないことに安心して笑顔を漏らした。
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