U:ふれあい

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「クリービー君、おはよう」


元々一対一で話すことのできる生徒は少ない。年下と言えどもローズは身を固くして構えた。
特にこの少年、ハリーのことが大好きみたいだが当のハリーは追いかけられるのが好きではないらしく避けている。コミュニケーション能力の低さを自覚しているローズにとって、今の状況は完全に処理範囲を超えている。


「イヤです。君なんてつけないで下さい。あ、僕、いきなりファーストネームで呼んじゃって...迷惑でしたか?」


彼はどうやら緊張とは無縁の体質らしく、その声に躊躇いはない。
コロコロと変わる表情をローズは半ば尊敬の表情で見ていると、彼はとんでもないことを言い出した。


「ーーーそれで、ローズの写真を撮ってもいい?」



「へ!?」



写真を見たことはあるが、撮られたことはない。興味というか、好奇心というか、どんなものか知りたいという気持ちはあるが慣れない人に大きなレンズを向けられるなんて、逃げたいと思わない訳がない。


「いや、えっと...あの」


ーーーーあぁ。いいよも嫌だも言えない自分が情けない。


「ダメ?ちょっとで終わるから。ね?いい?」


「え...」


いやあのその、ダメです。私がただ怖いんです。でも断ったら私がクリービー君のこと嫌ってると思われるのかな?
そろそろ思考回路から煙が上がり始めそうと思っていたら、両肩に手が置かれた。


「こーら! 女性にモノを頼むのにスマートさが足りねぇぞ、一年坊!」

「まずはその容姿を褒めるとか、距離の縮め方があるだろー」



グリフィンドールのムードメーカーにして、管理人アーガス・フィルチの天敵にしてホグワーツの驚異。
ウィーズリー家の双子、フレッドとジョージだ。

見慣れた二人の登場にローズは正直に安心した表情をしてしまい、コリンは正直にがっかりしていた。


そんな様子を見て、二人はおどけたポーズをとり始めた。
「「ほら、僕らを撮れよ!」」

「あっ、ハイ!」
予想外の申し出に驚きながらもコリンはカメラを構える。

ホグワーツで双子を知らない人はいない。多くの少年達にとって憧れの先輩なのだ。コリンも段々楽しそうにシャッターを切っている。


「ほら、ローズも来いよ!」

「えっ...」

「僕らと一緒なら平気だろ?」



手を引っ張られたかも思うと、カシャッと小気味のいい音がした。


「僕らはいいけど、ローズの写真は親父に見せるだけにしとけよ」



ありがとうございます、と何度もお辞儀をしてコリンは一年生の所へ戻った。
ローズはと言うと、フレッドとジョージに誘われて一緒に空いている席を探した。


「ハリーなら写真を撮られるのが嫌だって1回寮へ帰ったんだ。ロンと、忘れ物したハーマイオニーも一緒に」

「もういい加減帰ってくると思うぜ。何せローズがここにいるからな」




なるほど、と2人の間に座る。
「あの、さっきはありがとう。二人がいてくれて助かりましたっ」

はずみで頭を下げながらお礼を言うと、少し間を置いて思いっ切り抱き着かれた。

「くぅおおおおお!」

「いい! 妹2人で問題ない!!」


「えっちょ...二人ともどうしたの?!」


まだ学生といってもクィディッチの選手もこなす二人はそこそこ長身で体格も良く、両方から抱きつかれると前も見えない。

「離してー、お兄ちゃんっ!」

ふざけてそんなことを言ってみると、姿勢はそのままで二人はなぜかしんみりとした声を出した。

「男のロマンだ」

「すなわち“萌え”だ」



「「......いい...!」」








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