U:ふれあい
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ハリーの願いは思わぬ形で叶った。
思わぬ、というのは時間。すなわち夜も更けきらない早朝というのことだったが。
「んなっ...にごと?」
体をやや乱暴に揺すられてハリーは慌てて飛び起きた。眼鏡をかけると、そこには紅いユニフォームを着たオリバー・ウッドが立っている。
その瞳には良く言えば情熱が、悪く言えば狂気がギラギラと光っていた。
「今年のグリフィンドールは一味違う!完璧な計画を一夏かけて練った!後は練習あるのみだ!!」
言っていることの半分も頭に入ってこなかったが、ハリーがクィディッチ練習用のユニフォームを探しモソモソと着替え出したのを見てオリバーは満足そうに頷いた。
「それでこそ我がチームのエースたる姿勢! 15分後に競技場で落ち合おう」
まだ熟睡中のロンに走り書きのメモを残し、ハリーはニンバス2000を持って螺旋階段を降りた。そして談話室に入った瞬間、まだ眠い頭にあまり嬉しくない高い声が聞こえてきた。
「ハリー!!」
せめて嫌な顔を見せないよう精一杯努力して、適当に挨拶をしながらそそくさと寮を出ようとした。しかしコリンはピッタリと自分に付いて来た。その首には大きなカメラがぶら下がり、手には写真らしきモノを持っている。
「自分の部屋で寝てたら君を呼ぶ声がしたから来てみたんだ!昨日、写真の現像ができたんだ...ホラ、見て?」
チラリと見ると、物凄く必死にカメラの中に入らないようにしている自分の腕と、完璧な笑みを浮かべながらハリーを引きこもうとしているロックハートが写っていた。これは何時ぞやの、コリンが付きまとっていた時にヤツが現れハリーの承諾なく撮られたものだ。
「ね、ハリー。この写真にサインしてくれる?」
「ダメ」
ーーーーーサインなんてしたらせっかくの写真の中の自分の努力が無駄になるじゃないか
即答したのにコリンはまだハリーを追いかけてきた。気付けばグリフィンドール寮からは遠く離れた所まで来ていた。
ーーーーー腕しか写っていない人物のサインを求めて何になるんだろう?
ハリーは考えて、でも答えはきっと自分には理解できないものだと気付いて考えるのを止めた。
「ごめんコリン。僕急ぐから。クィディッチの練習があるんだ」
突き放すつもりで言ったのに、コリンはクィディッチという言葉に興奮し出してしまった。自分の発言に後悔しても、もう遅い。
「ウワァォ!ねぇねぇハリー。君はクィディッチのシーカーなんでしょ?どう?面白い?ルールってどうなってるの?いくつかのボールを使うんだよね?」
ハリーは無言だった。
それはコリンを無視してる訳ではなく、どう対処しているのか迷っているからだ。コリンはその様子を10秒程度観察した後に一枚の写真を取り出した。
「ねぇハリー? 今度ローズと一緒の写真を撮ってあげるよ!僕の写真カラーじゃないけど、この前のヤツ良く撮れたと思うんだ。ローズって写真写りいいよね〜」
ハタと足を止めてコリンが両手で持っている写真を見ると、双子に挟まれたローズが最初は緊張した面持ちで、次に双子に笑わされて楽しそうにしている様子が写っていた。
ほとんど反射で写真を小さな手から引き抜く。
「あぁっ!1枚しか現像してないのに!」
慌てるコリンに対しハリーは淡々とクィディッチの説明をし始めた。
「クィディッチは、クァッフル、ブラッジャー、スニッチというボールみたいな物を使って点数を競う...」
それが付いて来てよい、という合図だとコリンは理解し、ウンウンと笑顔になりながら呟いた。
「ま、ネガはあるからいっか」
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