U:ふれあい
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「絶対にいい席をとるからね!」
無邪気な笑顔で手を振りながら、コリンは競技場のスタンドの方へ走っていった。ハリーは約束の時間より大分遅れてしまいグラウンドの中央へ急ぐ。
「遅いぞ、ハリー」
「あー...ごめん、オリバー」
もうチームメンバーは全員揃っており、小言を言うオリバーに促されて一行は更衣室に移動した。
「いいか、僕は一夏かけて......」
そしてウッドは枕元でしていたのと全く同じ演説を始める。
「ようハリー。朝っぱらから元気だよな」
半ば聞き流していると、双子の片割れがヒソヒソ話しかけてきた。
「おはよう。もう全員集合してるとは思ってなかったよ」
「あぁ、耳元での大演説はまだよかったんだが、段々部屋の中央でやりはじめてな。リーやら同室の奴等からブーイングが出てしょうがなくだ」
質問にしっかりと答えてくれるあたり、こちらはジョージだろう。フレッドはと言うと、箒を支えに器用に立ちながら寝ている。
ちなみに双子、クィディッチに燃えているウッドにはイタズラしない。常識を逸し狂気に我を忘れた彼に死にそうな目に合わされたからだと言う。
キャプテン、オリバー・ウッドに触るべからずだ。
気付けばウッドは何やら図面を出して新戦略について説明していた。少しは聞かなければとも思ったが、チェイサーのアリシア、ケイティ、アンジェリーナは全員寝ている始末。つまり誰も真面目に聞いておらず、ハリーは今頃生徒達が食べているであろう朝食に思いを馳せ、美味しい空想に耽っていた。
「諸君!では実践だ!」
1時間は更衣室に籠っていただろう。全員がハッと現実に返って競技場に出ると太陽はすっかり上っていた。
「ハリー!」
呼び止められてスタンドを見るとローズ、ロン、ハーマイオニーが座っている。
「まだ終わってないのかい?」
信じられないという顔のロンにハリーはさらに信じ難い事実を説明した。
「まだ始まってもないんだよ」
ハーマイオニーが持っているマーマレード・トーストを見るとお腹の虫が盛大に鳴り出す。
「ハリー! 始めるぞ!」
恨めしそうにたくさんの食料が入っているであろうバスケットを見ながら競技場の中央へ行こうとしたら、ローズに肩をつつかれた。
「くちあーけてっ」
ローズがハリーの口に入れたのはチョコチップたっぷりのマフィン。
「ハリーの飛ぶとこ見るの初めてだから楽しみっ」
そんなこと言われたら頑張らない訳には行かない。ハリーは地面を蹴って空中に舞い上がった。
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