U:ふれあい
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目の前には、これでもかと眉尻が上がったポピー。気のせいか、いや気のせいじゃないだろうバックに火を吹くドラゴンが見える。
「貴女、熱が40度あるのに気付かなかったの...?」
医務室に着くやいなや直ぐにベッドに寝かされたローズ。いつもの優しいポピーが声を凄ませればそれなりの迫力があり、ローズは助けを求めてセドリックを探した。しかしそれもポピーにはお見通し。
「ディゴリーにはもう帰ってもらいます。助けを探しても無駄よ」
「......はい」
ディゴリーは頑張ってね、と微笑んでお礼を言う間もなく去っていった。
逃げ場のないローズは、せめてもと掛け布団をすっと頭の上まで引っ張った。
「...薬の量を計算して持ってくるから待ってなさい」
ポピーの声は幾分優しくなって、布団をポンポンと叩いてカーテンの外に出て行った。
ポピーが側を離れて耳をすませると、生徒の声に混じってピーっと医務室にそぐわない音が聞こえてきた。
ーーーーーーん?
「やっぱり一発煙出さないと元気になった気がしない」ってどういうこと?
医務室に来たことで安心できたおかげか、少し頭痛もマシになっていたので頭を持ち上げてカーテンの隙間から外を見ると、盛大に耳から煙を出している男子生徒が見えた。
ーーーーなるほど、確かにを一発出ている。立派な煙が。耳から。
即効性があるようで、薬を飲んだ生徒は次々にありがとうございましたと医務室を後にし、あっという間に生徒はローズだけとなってしまった。
なるほど、すごい薬があったもんだ。
「お待たせローズ」
ポピーの手には黄色の液体薬があった。
「この薬、すごく良く効くんだね。ポピーのお手製?」
上半身を起して薬を受け取ると、酸っぱい匂いがした。
「いつもは私のお手製のものを用意しているんだけど、こんな状況で今切らしててこれは市販のものなの」
私が作ったものの方が匂いも味もマイルドなのよと言われ、きっとそっちにもお世話になるんだろうなぁと予想した。
「私もみんなと同じようにすぐ帰れる?」
「貴女は熱が高すぎるから、内服後検温して状況を見てからよ」
よしよし、どうか効いてくださいよと祈りながら元気爆発薬を飲み込んだ。
匂いから想像した通り酸味のある薬を飲み込んだ後、想像したような煙は出てこなかった。その変わり、息苦しさと胸が締め付けられるような感覚がローズを襲った。
ーーーーーー最初は苦しいものなの?
そう聞こうとしたのに声が出ず、ローズの異変に気付いたポピーが何か言っていたが、何も聞き取ることができなかった。
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放課後、セブルスは教室の後片付けをしていた。生徒達が洗った大鍋に汚れが残っていないかチェックしていると、普段は背景も何もない絵画に看護師が現れた。
「ローズが薬を内服した後に急変しました。すぐに来てください」
看護師が全てを言い終わる前に、セブルスは走り出した。
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