銀魂 ( 沖田受け)
□あの日へ
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「 あーあ。俺けっこう江戸好きだったんだけどねィ … 土方さんもそうでしょう?」
緩やかな風が吹き抜ける。
サラサラと亜麻色の髪の毛が揺れるのをぼんやりと見ていたら当の総悟がこちらを振り返り、聞いてきた 。
「 まあ、、な 」
俺たち真選組は江戸を離れ、
今は小さな田舎町でひっそりと身を潜めている 。
上京したての頃は慣れない都会で大変で 、穏やかな武州の方がよっぽど住みやすいと思っていた。
だが、あの活気溢れる街のうざったいぐらいの喧騒も、
そこで出会った人々にも慣れて、
気づいたら江戸の思い出でいっぱいになっていた。
「 おーい !トシー!総悟ー!
向こうで流し素麺やってるぞー!」
ぼんやりとそんな事を考えていたら
近藤さんに呼ばれ、
今から行くと短く返事をした。
近藤さんが向こうへ戻ると総悟はクスりと笑った。
「 俺たち一応追われてる身だというのに呑気だよな 。」
「 いいじゃねぇですかィ、 田舎で流し素麺だなんて俺たち芋侍にはぴったりでさ」
こうしてみんなで集まって何かを食べるだなんて本当に久しぶりだ 。
江戸に来る前はみんなで何の分け隔てもなく馬鹿をしていた。
“悪友の集まり”まさにそんな言葉がぴったりだった。
だが、真選組として組織化されてからはそうはいかなくなった 。
総悟の言うようにこれが本来の俺たちの姿なのかもしれない 。
「 総悟、行くか 。 」
いま帰ろう、あの日へ 。
end .